近年、腸管機能不全の患者の予後は改善したが、長期にわたる静脈栄養管理は生活の質を低下させ、合併症は時に致死的である。小腸は他の臓器よりも虚血再灌流障害に弱く、移植後も急性・慢性拒絶反応が高い傾向にあることから、移植が困難な臓器であるが、小腸移植でしか救命できない患者がいるのは事実であり、移植後虚血再灌流障害の抑制は小腸移植の発展に必要不可欠と考えられる。本研究の目的は、抗炎症作用、抗アポトーシス作用をもつシグナルガス分子として、CO-releasing molecule; CORMを溶解した保存液を小腸グラフトの管腔内に投与することで、移植後虚血再灌流障害を制御できるかどうかを調べることである。令和2年度には、組織学的・免疫学的検討を行い、CORMの有用性を示した。また、腸管壁の透過性を評価することで、虚血再灌流障害の評価も実施した。令和3年度には、メカニズム解析として、COはGTPをcGMPに変換する酵素であるSoluble guanylyl cyclase (sGC)を活性化することで効果を発揮すると考え、各サンプルのcGMP濃度を測定した。その結果、予想通り、sGCがCOの臓器保護効果に関与していることを明らかにし、以上の結果を、transpantation誌に投稿受理された。令和4年度には、humanへの応用を想定し、虚血再灌流障害を抑制する最適なCORM濃度の検討を試みたが特定には至らなかった。
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