研究課題
新生児医療の発達により新生児壊死性腸炎(NEC)や新生児特発性腸穿孔(FIP)などの新生児外科疾患の救命率は改善しているが、その反面、疾患の病態生理は未だに謎に包まれており、病態メカニズムの解明と抜本的な予防・治療法の開発が待たれている。今回我々は、FIPにおける臨床経験を元に、FIPが母体へのストレスから発症するのではないかという発想を得た。本研究はFIPの疾患モデルラットの新規開発、モデルラットを使用した病態解明、および新規予防法の開発を目的とする。新生児外科症例は一施設で経験できる症例数が限られており、臨床情報からだけではエビデンスが得られにくい。そのため動物モデルによる検討が極めて重要であるが、FIPラットモデルの作成は世界的にも行われていない。一方で近年、FIPの組織学的特徴として腸管筋層の薄化や欠損が明らかになり、妊娠経過の過程で胎児が影響を受けた可能性が示唆されている。また研究代表者は、FIP発症児は非発症児よりも組織修復に関与する13因子が出生時において低値であることを発見し、diving reflexとの関連を示唆していると考えた。臨床においては、過去30年におよぶFIP患児の治療経験も有しており臨床における問題点を基礎研究で解明することで、臨床応用を視野に入れた研究開発が可能な体制を構築している。FIPに対する当研究グループの先行研究はなく初めての試みとなるが、疾患モデルラットを使ったNECの病態解明を行い、GLP-2や大建中湯、抗真菌薬による新規治療法の開発について研究してきた。新生児消化管穿孔の原因疾患として多面的な治療戦略としての研究を行ってきた。今回の研究にも基礎研究における研究体制を応用していくことが可能である。またFIP動物モデルを作成することができれば、FIP患者の新たな予防法・治療法の確立および、FIPの病態解明が期待できると考えた。
3: やや遅れている
FIPの動物モデルは世界的にも確立されていない。FIPは低出生体重児に多く発症する疾患であるため、その主たる要因は未熟性と考えられている。しかしながら疾患の全容は不明のままであり、複雑な発症メカニズムの存在が考えられる。いくつかの要因が重なり発症する可能性が考えられており、その一つとして母体の低酸素刺激による児のdiving reflexを考え実験を開始したが、その結果生じてくると予想されている腸管の筋層欠損の再現には至っていない。低酸素刺激の強度やラット週齢など研究の視野を広げて行う必要もあると考えている。また低酸素刺激以外の要素も必要であると考え、今後検討していく必要があると考えている。
diving reflexによる児の影響を考慮すると、腸管に還流障害を惹起する低酸素刺激やストレスが必要であると考えている。具体的な方策としては現在模索中であるが、diving reflexによって生じるバソプレッシンなどの胎児ストレスホルモンとの関連性などから方策の着想が得られるのではないかと考えている。
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