研究課題/領域番号 |
20K22959
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
高山 勝平 京都府立医科大学, 医学部附属病院, 病院助教 (50883162)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 横隔膜ヘルニア / 間葉系幹細胞 / エクソソーム |
研究実績の概要 |
先天性横隔膜ヘルニア(CDH)は、新生児呼吸管理の進歩や胎児治療の開発により救命率は目覚ましく改善しているが、最重症例においては、 出生時既に致死的な極度低形成肺をきたしてお り、胎児期における治療介入が希求されている。我々はこれまでCDHに対する新規胎児治療の開発に向け,ニトロフェンCDHモデルラットを用いて間葉系幹細胞(MSC)を羊水腔投与することで、ラットCDH胎仔において肺成熟が促されることを報告した。しかし、MSCは組織修復能を有し、再 生医療・細胞治療におけるソースとして研究利用 されているが、MSC自体に腫瘍原性、免疫適合性、 微小血管内塞栓形成といったリスクがあり、臨床 応用という観点からはまだまだ課題が多い。一方、MSCから分泌されるEVsは、MSCの周囲組織に及ぼ す作用機序の一つであるparacrine作用において重要な役割を担うとされており、MSC投与と同様の治療効果がMSC 由来エクソソーム/細胞外小胞(MSC derived Extracellular vesicles: MSC由来EVs)も有すとの報告があり、さら にMSC由来EVs投与は、cell-free therapyにあたり、MSC関連合併症を回避できるメリットがある。 今回の実験では、MSC由来EVs投与の効果を検討することを目的としており、MSC由来EVs投与に含有されている代表的なgrowth factorの肺成熟に与える影響を比較検討し, MSCが肺成熟を促すメカニズムの解明を目指す。また中動物(ウサギ)を用い既に臨床応用されているTracheal occlusion (TO)を行った上で、MSC由来EVs投与を投与し、 さらなる肺成熟作用があるかを検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以前から使用経験のあるラットCDH肺を用いMSCのparacrine作用に関する実験をまず進めている。コラーゲン膜の表面または裏面に表面積あたり1×10E個のMSCを播種し、MSC培養培地で一晩培養する.培地を無血清のDMEM/F-12培地に入れ替え、正常妊娠SDラットまたはニトロフェン投与妊娠SDラットより胎生13.5ー14.5日目胎仔を摘出し,胎仔より肺芽を採取して,コラーゲン膜上で気液界面培養を72時間行った。24時間毎に肺芽の状態を評価し凍結保存する。MSCがない培養群をControl群、MSCと接着した状態の培養群をCo-culture群、MSCと非接触状態の培養群をSeparate-culture群とした。この3群に分けることで、MSCの持つ直接作用、paracrine作用の有無を検討している。 組織学的評価として肺芽の表面積と終末肺芽数の増加率を比較検討した.正常妊娠SDラット胎仔(胎生13.5日目または胎生14.5日目)由来の肺芽培養ではContorol群とCo-culture群より摘出した肺芽の培養では表面積の増加率で有意差を認めたが,Separate-culture群に関しては有意差を認めなかった。ニトロフェン投与妊娠SDラットに関しても並行して同様の実験系を行い評価を行なったが、有意な結果は得られなかった.先行論文よりMSC培養上清を用いた肺芽培養で成長率の増加を報告していることから,培養法の再検討が必要考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
肺芽培養の検討内容としては、MSCの培養条件の改善を検討している。MSC由来EVsによる肺芽成長への影響を検討するため、肺芽培養時に無血清培地に入れ替えていたが、無血清培地ではMSCの生存には過酷な条件であることから血清を含む培地への変更を検討している。また,肺芽培養する前にMSCを数日培養することで培地中MSC由来EVsの濃度に差ができ,肺芽成長に影響を及ぼす可能性があることを考慮して最適培養日数を検討している。 組織学的評価で有意差を得られる培養条件を決定した後、培養肺芽中のgrowthfactor(FGF-10,FGF-9,Wnt7b,BMP4,SHH ,VEGF-α)の発現をRT-PCRで評価する。また、Western BlottingやELISA法により肺芽培養の培養上清中のMSC由来EVsのgrowth factorのタンパク解析検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の実験では、MSC由来EVsの関与を確認する目的で、in vitroの実験を進めており、in vivoでの実験にまで至っていないため、動物購入費での使用が少なく、物品費として使用した金額は95,029円であった。また、コロナ禍での、学会報告等で使用予定であった旅費(250000円)の使用が本年度はなく、次年度使用額として989,971円が生じた。 次年度は、培養肺芽中のgrowthfactor(FGF-10,FGF-9,Wnt7b,BMP4,SHH ,VEGF-α)の発現をRT-PCRでの解析、およびWestern BlottingやELISA法によタンパク解析検討している。また併せてin vivoでの実験を開始する予定であり、試薬および実験動物の購入に使用する予定である
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