研究課題/領域番号 |
20K22962
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
伊藤 諭子 北里大学, 医学部, 助教 (60623105)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 慢性疼痛 / Arf6活性化制御因子Cytohesin-2 / ADPリボシル化因子(Arf6) / 代謝型グルタミン酸受容体(mGluR) |
研究実績の概要 |
疼痛は、炎症や傷害などの重要な生体シグナルである一方、慢性化によりQOLの著しい低下や身体機能の回復遅延を招くことから、疼痛メカニズムの解明や治療法の開発は非常に重要である。本研究は、細胞内小胞輸送を制御するCytohesin-2-Arf6経路による代謝型グルタミン酸受容体(mGluR)を介した慢性疼痛の分子制御機構、治療標的とした慢性疼痛制御の可能性についてCytohesin-2遺伝子欠損マウスを用いて個体レベルで検証・解明することを目的とする。 (1)Cytohesin-2遺伝子欠損マウスを用いたmGluRシグナル経路を介する慢性疼痛制御機構の解明 ①野生型マウスの脊髄腰膨大部におけるCytohesin-2やmGluRを含む関連タンパクの発現局在について免疫組織学的解析を行った。Cytohesin-2は脊髄後角Ⅰ/Ⅱ層に多く存在し、Arf6やmGluR5、mGluR5の下流シグナル経路のタンパク質であるGαqの近傍に顆粒状に存在し、一部は共局在していることが明らかとなった。 ②野生型マウスとCytohesin-2遺伝子欠損マウスを用いて疼痛モデルを作成し、疼痛感受性の変化について解析を行ったところ、Cytohesin-2遺伝子欠損マウスでは疼痛感受性が減弱していることが明らかとなった。さらに疼痛誘発時の脊髄におけるArf6活性化の変化を解析したところ、野生型とCytohesin-2遺伝子欠損マウスいずれもArf6活性は疼痛誘発後12時間で最も高くなることが明らかとなった。 (2)Cytohesin-2-Arf6経路を治療標的とした慢性疼痛に対する効果の検討については、野生型マウスにCytohesin選択的阻害剤(SecinH3)の髄腔内投与を行い、疼痛感受性の変化を解析したところ、SecinH3投与群において疼痛感受性が減弱する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)Cytohesin-2遺伝子欠損マウスを用いたmGluRシグナル経路を介する慢性疼痛制御機構の解明 Cytohesin-2とmGluRやmGluR下流シグナル経路のタンパク質との局在解析は、概ね計画通り進行している。マウスを用いた疼痛モデルの解析については、野生型と遺伝子欠損マウスの疼痛過敏性の解析はほぼ終了し、現在は慢性疼痛におけるmGluRの関連性を解明するため、グループⅠmGluRアゴニスト(DHPG)の髄腔内投与による疼痛感受性の解析実験の準備中であり、進捗状況は概ね計画通りである。 (2)Cytohesin-2-Arf6経路を治療標的とした慢性疼痛に対する効果の検討 現在Cytohein選択的阻害薬(SecinH3)の髄腔内投与実験を進行中であり、当初の計画通りに進行している。
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今後の研究の推進方策 |
(1)Cytohesin-2遺伝子欠損マウスを用いたmGluRシグナル経路を介する慢性疼痛制御機構の解明 Cytohesin-2とmGluRのさらに詳細な局在解析を行うため、免疫電子顕微鏡法を用いた解析を検討中である。さらに、疼痛モデルを用いた行動実験により野生型とCytohesin-2遺伝子欠損マウスにおいて疼痛感受性に差があることから、Cytohesin-2遺伝子欠損マウスにおけるmGluRやmGluR下流シグナル経路のタンパク質の詳細な局在について免疫電子顕微鏡法による解析を検討中である。 疼痛モデルによる行動実験については、現在慢性疼痛におけるmGluRの関連性を解明するため、グループⅠmGluRアゴニスト(DHPG)の髄腔内投与を行い、疼痛感受性の変化を解析する実験を準備中である。さらに、DHPG投与によるmGluR下流シグナル経路のタンパク質の発現量の変化についても解析を検討中である。 (2)Cytohesin-2-Arf6経路を治療標的とした慢性疼痛に対する効果の検討 現在Cytohein選択的阻害薬(SecinH3)の髄腔内投与実験を進行中であり、SecinH3投与によるArf6活性化の変化についても解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの万円により研究が一時中断したため、予定金額を使用せず、次年度使用額が生じた。 本年度は、前年度残金を合わせ、試薬、消耗品、動物購入費として使用する。さらに疼痛実験に使用するマウスの飼育費としても使用する。また学会において本研究の成果を発表する際の旅費や、研究結果を2021年中に論文投稿する予定であるため、校正費としても使用する。
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