研究実績の概要 |
本研究では、肝再生調節機構におけるTumor endothelial marker 8(TEM8)の役割とシグナル経路を解明することにより、慢性肝疾患に対する新規治療開発のための研究基盤構築を目指すことを目的とした。 2021年度の研究成果として、C57BL/6Jマウスに対するコリン欠乏食を用いた慢性肝障害モデルマウス(NAFLD/NASHモデルマウス)の作製を実施した。特殊飼料の給餌はDay28まで継続し、Day7, 14, 21, 28における組織解析および血液生化学検査により肝障害の評価を行った。特殊飼料を給餌したマウスは、Day7において既に高度な脂肪肝を呈し、AST, ALTの上昇(AST/ALT: <1)を示していた。また、給餌期間が長くなるにつれて、炎症細胞の出現・線維化といった組織学的変化が認められた。組織学的評価にはHE染色およびOil-red染色、MT染色を用いて行った。このことから、本研究で用いた特殊飼料により、NAFLD/NASHモデルマウスを作製することができたと考えられた。次に、これらモデルマウスを用いたTEM8の発現解析を実施した。これまで、正常組織におけるTEM8は細胆管マーカーの1つであるZO-1の内側で発現していたことから細胆管に局在していることがわかっている。しかし、脂肪肝による肝細胞の形態的変化に伴い、TEM8の細胆管での発現は減少することがわかった。また、それとは別に一部の肝細胞においては細胞質内にTEM8が発現していた。現在、これら組織において、TEM8のリガンドであるuPAおよびCol6免疫組織化学的解析を実施し、さらにTEM8 mRNA・タンパク質の発現を解析することで慢性肝障害に伴うTEM8の発現・局在の変化に関する検索を行っている。また、TEM8のクローニングに着手しており、in vitroでの機能解析を実施予定である。
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