研究課題/領域番号 |
20K22968
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
石井 琢郎 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (50748754)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 医用超音波 / ウロダイナミクス / ベクターフローイメージング |
研究実績の概要 |
超音波排尿流ベクターフローイメージング(Uro-VFI)を用いた尿道内の排尿流動態の定量的評価法を開発するため、生体内の排尿流動態を模擬する下部尿路模型を作製した.下部尿路の内腔形状をCADソフトウェアで設計し,3DプリンタとPLAフィラメントを用いて印刷した.この3D尿道内腔形状モデルの周囲に10-15wt%のPVA水溶液を充填し,凍結融解法によりゲル化した.内部に残されたPLAをクロロホルムで溶解する事により尿道内腔を中空にし,下部尿路模型とした.この下部尿路模型にプログラマブルギアポンプを接続する事で,任意の流量変化を尿路内に発生させ,尿道内腔形状と流量変化による様々な下部尿路内排尿流動態を模擬できる実験環境が構築された. 次に下部尿路模型内の流れ場の性状を計測する計測システムを構築した.2D-PIVシステムの計測レーザー面と超音波のイメージング平面を一致させるアルミフレーム製治具を設計・構築し,模型内の排尿流動態2次元速度ベクトル場を高精度に計測・可視化できる画像計測系を構築した.また,下部尿路模型の流入量と流入・流出圧較差を同時計測する流体エネルギー計測系を構築した. 排尿流動態の定量評価法の一つとして,Uro-VFIによって得られる速度ベクトル場から尿道内の圧力変動を推定する手法について検討した.速度ベクトルを時空間的につなぎ合わせる事により流線を生成し,流線に沿った速度変化にベルヌーイの公式を当てはめる事によって,流線上の相対的な圧力変動を推定した.初期評価として,狭小部を持つ円筒内の速度ベクトル場を流体シミュレーションから取得し,得られた速度場から空間的圧力変動を推定したところ,流体シミュレーションによる真値との相対誤差は約3.5%程度であり,狭小部の位置推定や流体力学的影響の評価に十分な推定精度を持っている事が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
下部尿路模型の作製環境や,超音波・光学系の流れ場同時計測システムなど本研究の基盤的実験環境の構築に当初の予定より時間がかかり,排尿流動態の定量的評価指標開発に関しては,流路内圧力変動の推定に関する基礎的検討にとどまっている.下部尿路の局所的硬化や狭小化によって尿道内に発生する渦流や乱流の特徴の定量的指標やその可視化については,令和3年度早期に実施する.
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今後の研究の推進方策 |
今年度開発した下部尿路排尿流動態を模擬する実験環境と,その流れ場の速度ベクトルの超音波・光学的な同時計測及び圧力較差の計測系を用いて,下部尿路の閉塞度や閉塞位置などが,尿道内の流れ場の時空間的局所特徴量や流体力学的エネルギーの分布に与える影響を明らかにする.さらに,排尿症状を有する患者を対象として,Uro-VFIによる生理的排尿流イメージングを実施し,得られた排尿流動態の流体力学的特徴量と従来の下部尿路性状評価指標とを照合比較する事で,排尿症状の流体力学的因子の解明を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では,直動アクチュエータを用いた3D-PIVシステムを設計・構築予定であったが,本年度は,2D-PIVシステムと超音波イメージングの同時計測系の構築とキャリブレーション等を優先した.次年度,当該2D-PIVシステムのレーザー平面を高精度に制御する直動アクチュエータを導入し,流路内の三次元的な流れ場を計測可能な3D-PIVシステムに拡張する.また,当初予定していた医学系研究協力者との打ち合わせは,県外への出張が困難な情勢であったため,次年度に実施する.
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