現在、去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)の患者の治療法は限られており、癌細胞の進展や転移の制御は困難を極める。CRPC新規治療法の開発には、去勢抵抗性増殖のメカニズムの解明が重要である。申請者は、最近、神経伝達物質受容体であるムスカリン受容体の活性化が、去勢抵抗性増殖を亢進させることを報告した。さらに、ムスカリン受容体の下流シグナルとして、FAK-YAPシグナルの活性化を見出し、この遮断がCRPC治療の一つの選択肢となり得ることを示した。このような背景の中、本研究では、前立腺癌における神経支配による去勢抵抗性増殖の、より詳細なメカニズム解明と、シグナル遮断による新規治療の探索を目的とした。特に、最新のゲノム技術を用いて網羅的に機能性RNA発現解析を行ない、前立腺癌細胞が、去勢というストレスに対してムスカリン受容体発現亢進を介して、去勢抵抗性増殖機構を獲得する新たなメカニズムを解明したい。 本研究では、神経支配による前立腺癌の去勢抵抗性増殖のメカニズムを、マイクロRNAを通してより詳細に明らかにし、さらに、この経路を遮断する新規治療薬を探索したいと考えている。申請者の論文で、LNCaPを去勢状態に置くと、ムスカリン受容体の発現が1~3週間で上昇することを報告した。 令和2年度はLNCaPをアンドロゲン除去血清+新規AR阻害薬であるEnzalutamideの下で培養し、RNA抽出を行った。 このRNAを用いて、癌細胞株レベルでの機能性RNA発現変化を、次世代シーケンサーを用いて確認する。
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