研究課題/領域番号 |
20K22971
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤澤 興 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (00878390)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 顔面神経 / 形態形成 |
研究実績の概要 |
本研究では胎児の器官形成期に限定したレチノイン酸/レチノイン酸受容体アンタゴニストの投与によって「神経堤細胞に分化異常を誘導し、顔面神経走行に異常をもつ成体マウス」を作成し顔面神経機能の評価を行う。顔面の形態異常・顔面神経の走行異常・顔面神経の機能異常との関連を詳細に検討することによって、先天性顔面神経麻痺症例における早期治療的介入方法の開発を目的としている。 胎生期のレチノイン酸シグナルの修飾によって顔面の発育異常を薬剤性に誘導したマウスを対象に、顔面神経の機能・顔面神経の形態解剖・顔面骨軟部の組織学的構築の相関関係を解析することによって、先天性顔面神経麻痺の原因となりうる組織・解剖学的異常を明らかにすることを目指す。本年度は胎生期、特に妊娠8-10日前後におけるマウスの形態形成の過程を可視化するため、背部に作成したチャンバーを通してマウス胎児にアクセスし、形態を観察する実験系の構築に取り組んだ。安定した系を構築することができれば、レチノイン酸/レチノイン酸受容体アンタゴニストの投与による形態形成の変化をより容易にリアルタイムで観察することが可能になると考えられる。今後、母体への薬剤投与量・投与時期について複数条件を検討し、誘導に最適な条件、すなわち「顔面の形態異常を惹起しつつ、顔面神経の機能評価が可能な成体マウスを得られる条件」を決定する。こうして得られた胎児もしくは成体マウスにおける顎顔面の形態・顔面神経の走行および組織学的性状・顔面神経の機能を明らかにする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マウスの胎生期における形態形成を可視化するため、これまで報告されていない新規の実験系の開発に取り組んでいるため。
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今後の研究の推進方策 |
顎顔面の形態・顔面神経の走行および組織学的性状・顔面神経の機能を以下の3つの観点から検討し相関関係を明らかにする。 ①顔面神経の生理学的機能:過去に顔面神経麻痺を誘発したマウスでは頬部の髭の動き・方向や眼瞼の開閉が正常と異なることが知られている。これらを重症度によって点数化し、経時的に総合的な顔面神経機能の評価を行う。顔面神経根部から各末梢分枝までの連続性について電気生理学的な評価を行う。 ②顔面神経の形態・走行:胎生10.5-11.0日胚における顔面神経の走行を全胚での神経免疫染色を用いて観察する。出生直後または4週齢以降のマウスの頬部皮膚を切開・展開して、顔面神経のマクロでの走行を観察する。 ③顎顔面筋骨格・軟部組織の形態:胎生18.5日以降の組織切片や骨軟骨染色標本を作成し、表情筋の組織学的構築や顔面神経との位置関係、これらに付随する脈管や骨軟骨組織の構造を観察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
来年度により多くの実験動物、実験機器を購入する予定があるため。
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