研究課題/領域番号 |
20K22973
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岡田 寛之 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (10883481)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 破骨細胞 / シングルセル / 多核巨細胞 |
研究実績の概要 |
高齢社会日本において、骨粗鬆症に起因する脆弱性骨折患者の生命および機能予後改善は、医療・介護の重要課題である。現存する骨粗鬆症治療薬では、全ての高齢者を安全に治療できないため、「速やかに」かつ「安全に」骨密度を改善する新規薬剤の開発が求められている。 本研究では、破骨細胞分化における転写制御ネットワークの多様性を明らかにし、前例のない転写制御による創薬ターゲットを探索することを目的として開始した。同じ生理的環境下であっても、破骨細胞による骨吸収活性になぜ多寡が生まれるのか、メカニズムを明らかにする必要があったためだ。 破骨細胞の1細胞解析は、我々の予備検討においても、直近で報告されたin vitroマウス破骨細胞分化における1細胞解析の報告(塚崎ら、Nat Metabol 2020)においても、破骨細胞が十分数に存在する系にもかかわらず想定よりもはるかに少なかった。従来の1細胞解析の技術では、接着の強い多核巨細胞の1細胞解析は困難だと考えられた。 そこで接着細胞に汎用性の高い新たな1細胞解析の開発に着手した。2021年度1回目先端ゲノム支援に応募し、採用頂いた。2020年度中に予備検討は既に終えており、新たに開発する要素技術が、1細胞解析に応用可能なことを確認している。また本要素技術は、これまでの1細胞技術がカバーしきれていない接着細胞の生理的形態情報を含む解析を可能なものとし、未知の生物現象解明に役立つものと期待され、研究を進めているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
従来の1細胞解析をそのまま適応できない、脆弱な接着細胞、多核巨細胞に対して応用可能な新規1細胞遺伝子発現網羅的解析手法に着想し、開発に着手し始めた。予備検討の結果、接着力の高い細胞に対しても、網羅的遺伝子発現解析に耐えるサンプル採取が可能であることが分かった。また、セミバルクの遺伝子発現解析の結果、これまでの常識では考えられなかった成熟破骨細胞の遺伝子発現プロファイルが分かった。 2021年度1回目先端ゲノム支援に採択され、新規1細胞解析法の確立をさらに推進し、好評でいるように準備を急いでいるところである。当初の計画以上の進展がすでに得られており、骨粗鬆症治療のブレークスルーを目指し新たなシーズが得られるものと期待される。
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今後の研究の推進方策 |
巨大で、脆弱な、かつ接着力の強い細胞に対しても適応可能な1細胞解析技術の開発を推進する。昨年度のうちに、1細胞分取技術が、1細胞解析に耐えうることを検証しており、今年度4月に第1回目の実証実験を行う。結果を踏まえて、ただちに論文公表の準備を進める。さらに米国骨代謝学会、日本骨免疫学会、骨代謝学会、分子生物学会をはじめ、国内外の領域を超えた研究者とのディスカッションを重ね、本研究で開発する要素技術の精度を高めていく予定にしている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新規1細胞解析技術の基盤要素技術の開発予備検討、セミバルクのRNA-seqを2020年度行った。2021年度は、1細胞RNA-seqを行う予定であり、支出が大幅に増加することが見込まれており、予算配分を計画した上で、都合次年度使用とした。新規1細胞解析に邁進する所存である。
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