研究課題/領域番号 |
20K22975
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中田 俊介 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (50876183)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 人工血管 / コラーゲン / 小口径 |
研究実績の概要 |
現在臨床で用いられる中口径(内径6-8mm)ないし大口径(内径10mm以上)の人工血管は、安定した臨床成績を有している一方で、内径4-5mm以下の小口径人工血管は満足できるものがない。たとえば、心臓血管外科領域のバイパスグラフトに使用するためには、自家血管に匹敵する優れた開存性を有する小口径人工血管の開発が求められる。 研究代表者はゲルのガラス化技術を応用し、コラーゲンに生体吸収性カルボキシルメチルセルロース(CMC)を組み合わせ、さらに内皮細胞選択的接着ペプチドを付与した「Vitrigel functionalized with C-Triad (CMC, Collagen, Cell-selective peptide); ViCTri」を独自設計し、小口径人工血管の基盤材料となる研究・開発を行ってきた。本研究では、ViCTriを小口径人工血管として機能させるため、力学的特性や表面構造加工等の最適化を図り、動物実験でその有用性を評価することを目的とする。 本年度では、コラーゲン-CMC特性の最適化検討を行った。コラーゲンはあらゆる細胞を高接着するため、細胞選択接着性を見出せない。細胞選択接着性を持たせることができるポリマーを探索したところ、CMCは濃度依存性に非接着性を示すことが分かった。また、コラーゲンゲル層数を増やすことで力学的強度が増すことがわかった。強度が得られたコラーゲン-CMCゲルを担体に巻きつけガラス化、再水和をすることで、内径1-3mmの管腔構造の作製に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画通りに遂行していることから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
非細胞接着性であるCMCの表面に、内皮細胞選択的接着性ペプチドを、汎用性基板修飾法DOPAで修飾し、in vitroにて細胞接着性を確認する。ペプチドアレイ法によりペプチド修飾CMC上に内皮細胞を播種し、継時的(数時間~数日)に細胞接着性や細胞増殖性について評価する。 生体内吸収速度を調べるため、ViCTriシート状をマウス皮下に埋植し、継時的(数週間~数ヶ月)に周囲組織含む材料を採取し、HE染色による組織学的評価を行う。その後、内径約4mmの管腔構造に形成したViCTriを用い、イヌ総頚動脈(内径4mm程度)置換術を行う。比較対照群には、control群として、市販人工血管(ePTFE)、ペプチド無しViCTri群、ペプチド修飾ViCTri群を作成する。継時的(数週間~数ヶ月)にエコーで血流測定(開存性評価)したのち、人工血管を摘出し、組織学的評価(HE染色、免疫染色)を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
成果発表や情報収集のために旅費を計上していたが、参加した学会や研究会はweb参加だったため予定していた使用額と差が生じた。また、本年度ではin vitro試験がメインとなり、計上していたin vivo試験で必要な物品費(動物購入費や試験試薬)の使用額に差が生じた。次年度の使用計画として、in vivo試験による効果判定が主な実験内容となるため、試験試薬、動物購入費などの物品費や、動物飼育管理費として使用する。
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