尿路結石は多因子疾患であり、様々な網羅的解析を用いて研究が行われているが単一の解析では限界があることがこれまでの研究でわかってきた。 本研究ではヒト尿路結石症ゲノムワイド関連解析(GWAS)と結石モデルマウスの網羅的解析を統合オミクス解析することで腎臓特異的な尿路結石症の関連分子と細胞種を同定した。 GWASは様々な人種で行われているが、今回の研究には日本人集団(BioBank Japan)とヨーロッパ人種(UK Biobank + FinnGen)のGWASを用いた。尿路結石症GWASを解析して、ヒトの遺伝的リスク遺伝子と結石形成にとって重要な細胞種を解析した。また、結石モデルマウスの腎臓について遺伝子発現解析(RNA-seq)、プロテオーム解析(LC-MS)を用い、遺伝子発現、タンパク、リン酸化ペプチドを網羅的に定量した。公開されているマウスのシングルセルRNA-seqデータを用いて、腎臓の各細胞種特異的遺伝子を定義して研究に用いた。 その結果、ヒト-マウスの統合解析では31遺伝子と21リン酸化部位が共通した結石関連分子として示した。これらにはUMODやAPOMなど、既知の結石関連分子を複数含んでおり、妥当性のある結果であった。また公開されているマウス腎のシングルセルデータからその由来を同定したところ、例えばUMODは集合管、APOMは近位尿細管で結石形成に関与していると示した。エンリッチメント解析の結果ヒト-マウスで共通して免疫系細胞が重要な役割を果たしていることが示唆された。 本研究の成果は、UMODなど、既知である結石関連分子の由来となる細胞種を指摘したこと、免疫系細胞由来のスカベンジャー遺伝子であるSTAB1などを新たな結石関連分子として同定したことである。
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