研究実績の概要 |
本研究は、体外培養した骨髄由来免疫抑制細胞(Myeloid-derived suppressor cell, BM-MDSC)の免疫抑制効果を高リスク角膜移植マウスモデルで検証し、ヒト角膜移植における新規免疫寛容療法開発の基盤研究を実施した。C57/BL6Jマウスの骨髄細胞をインターロイキン(IL)-6、顆粒球単球コロニー刺激因子(GM-CSF)と共培養し、BM-MDSC(Gr1陽性CD11b陽性細胞)を誘導した。混合リンパ球反応(MLR)にBM-MDSCを付加し、T細胞増殖能を評価した。また、フローサイトメトリーで制御性T細胞の割合を測定した。MLR後のサイトカインの発現量(ELISA法)、誘導性一酸化窒素合成酵素(iNOS)の発現(リアルタイムPCR法)ならびに一酸化窒素(NO)の産生を測定した。血管新生を誘導した高リスクマウス角膜移植モデルを作成し、結膜下注射によるBM-MDSCの移入ならびに角膜移植片の生存率、血管・リンパ管新生を評価した。IL-6とGM-CSFの共培養によりiNOSの発現が増加したBM-MDSCが誘導された。BM-MDSCのMLRへの付加により炎症性サイトカインの減少、抑制性サイトカインの増加、T細胞増殖の抑制、制御性T細胞の誘導を認めた。また、結膜下注射によるBM-MDSCの角膜移植片へ移行ならびに生存率の延長、血管新生ならびにリンパ管新生の抑制を認めた。BM-MDSCはiNOS経路を介して、T細胞増殖の抑制、制御性T細胞の誘導、血管・リンパ管新生の抑制によりマウス角膜移植片の拒絶反応を抑制した。本研究では、体外培養したBM-MDSCの免疫抑制効果を高リスクマウス角膜移植モデルで検証し、ヒト角膜移植における新規免疫寛容療法開発の基盤を構築した。
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