角膜には三叉神経第一枝が角膜神経として高密度に分布している。この角膜神経の興奮制御機構を明らかにすることが、角結膜炎やドライアイなどの眼表面疾患における眼痛や不快感といった自覚症状の発生機構を解明する上で非常に重要であると考えられている。本研究では、角膜上皮ならびに間質細胞が角膜神経線維に作用して眼表面の感覚受容に影響を与えると仮説を立て、その作用を解析できる新たな実験系を構築することを目標とした。本研究を推進することにより、刺激受容における上皮細胞ならびに間質細胞の役割に迫り、「角膜構成細胞による眼表面の知覚制御」という新たな概念を証明することを目指す。 本研究でははじめに、三叉神経節細胞と角膜上皮細胞の初代培養細胞の培養条件を検討した。三叉神経節細胞はグリア細胞の増殖を抑える薬剤を添加し、一週間以上培養することで神経線維が十分伸長することが分かった。また、角膜上皮細胞は培養後一週間までであれば、線維芽細胞がほとんどない状態で培養できた。この条件を基にCampenot chamberを用いた共培養を作製した。三叉神経節細胞の神経線維がCampenot chamberの異なったコンパートメントに神経線維の先端が十分到達するまでに、4週間の培養が必要であった。三叉神経節細胞を4~8週間培養したものに、神経線維が分布するコンパートメントに上皮細胞をまくことで、神経線維終末と上皮細胞が隣接する共培養系を作製することに成功した。
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