研究課題/領域番号 |
20K22990
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
長谷 敬太郎 北海道大学, 医学研究院, 特任助教 (70880376)
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研究期間 (年度) |
2023-02-26 – 2025-03-31
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キーワード | ぶどう膜炎 / 実験的自己免疫性ぶどう膜炎 |
研究実績の概要 |
ぶどう膜炎モデルマウスの誘導にはこれまでヒト視細胞間レチノイドタンパク合成ペプチド(hIRBPp)1-20が最もよく用いられてきた。しかし、炎症が非常に弱く、炎症が起きないこともあることが、問題となっている。近年、ぶどう膜炎モデルマウスのためのhIRBPp651-670という新たなペプチドが開発され、強い炎症が得られ、ぶどう膜炎発症の割合も良いという報告もある(Mattapallil MJ et al. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2015)。そこで、より良いぶどう膜炎モデルマウスを確立するために、従来のhIRBPp1-20と新たなhIRBPp651-670という2種類のペプチドによって誘導したぶどう膜炎モデルマウスの炎症の強さを比較した。 その結果、臨床的炎症スコア(平均値)は、注射後14日目では、hIRBPp1-20群では0.3、hIRBPp651-670群では3.4であった。注射後17日目では、hIRBPp1-20群では0.5、hIRBPp651-670群では3.9であった。注射後21日目では、hIRBPp1-20群では1.3、hIRBPp651-670群では3.9であった。Mann-Whitney U検定では、注射後14日目(P < 0.0001)、17日目(P < 0.0001)、21日目(P < 0.0001)で有意差が認められた。注射後21日目の眼球組織学的炎症スコアでも、Mann-Whitney U検定でP < 0.0001であり、有意にhIRBPp651-670群ではhIRBPp1-20群に比べて組織学的にも炎症が強かった。以上の結果から、hIRBPp1-20よりhIRBPp651-670を用いて誘導したぶどう膜炎モデルマウスの方が安定して強い炎症が得られ、実験に用いるのには適していることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究で使用しているぶどう膜炎モデルマウスである、実験的自己免疫性ぶどう膜炎マウスは炎症にばらつきがあり、炎症が弱いことが知られている。そのため、炎症が安定して、強く生じるぶどう膜炎モデルマウスの確立に、試行錯誤し、時間がかかっているため。
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今後の研究の推進方策 |
免疫細胞、特にマクロファージへのリン脂質酸化物の影響について明らかにするため、in vitroでのマクロファージ系の培養細胞を用いて検討を行う。(1)培養液中にリン脂質酸化物を加えた際のマクロファージの反応性の変化(T細胞への抗原提示能、炎症系・非炎症系サイトカインのプロファイル)(2)さらに PBN を添加した際にそれらの変化を抑制できるかどうかについて調査する。 また、抗酸化剤の一種であるα-phenyl-N-tert-butylnitrone(PBN)はリン脂質からの活性酸素を捕捉・消去する性質を有する。EAUを惹起した動物にPBNを連日腹腔内投与(50 mg/kg)してぶどう膜炎軽症化を検討する介入試験を行う。 さらに、ぶどう膜炎患者の血液および眼内液リン脂質酸化物を測定し、健常対照と比較する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は実験が思うように進行しなかったため、次年度使用額が生じた。 次年度は、物品費(マウスの購入、飼育費、設備費や細胞実験の試薬など)に使用する予定である。
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