研究課題/領域番号 |
20K22992
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
橋本 研 東北大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (90887928)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | cochlear synaptopahty / 内有毛細胞 / 蝸牛 / シナプス / ストレス / 神経栄養因子 / hidden hearing loss |
研究実績の概要 |
ストレス負荷が内有毛細胞シナプスへ及ぼす影響を評価するため、まず初年度は、下記のセットアップを行った。①CBA/CaJマウスとC57BL/6マウスにおいて、永久性聴覚閾値上昇(PTS:permanent threshold shift)ではなく一過性聴覚閾値上昇(TTS:temporary threshold shift)とcochlear synaptopathyを生じさせる音響曝露条件の設定、②拘束浸水ストレス負荷装置の作成。 ①についての検討では、8-16kHzのoctave band noiseを、8週齢・オスのCBA/CaJマウスに対しては90、92、94、96、98、100dB SPL、4週齢・オスのC57BL/6マウスに対しては78、80、82、84、86dB SPLの各々の条件で2時間曝露し、8週齢・オスのCBA/CaJマウスでは92dB SPL、4週齢・オスのC57BL/6マウスでは86dB SPLがPTSではなくTTSとcochlear synaptopathyを生じさせる最も適切な音響暴露条件であることを見出した。聴覚閾値は聴性脳幹反応(ABR:auditory brainstem response)で測定し、内有毛細胞シナプス数はcochlear whole mount法と蛍光免疫染色により作成した蝸牛の標本を共焦点顕微鏡で撮影し数えた。 上記の成果を元に、次年度はストレス負荷の有無によるcochlear synaptopathyの変化を評価する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
内有毛細胞シナプスの評価には、ABRでの閾値測定、cochlear whole mount法や共焦点顕微鏡による組織学的解析といった特殊な評価系が必要である。これまで本研究代表者はこれらを留学先の米国で行ってきたが、当施設で再開するにあたり米国とは異なる機材を用いるため、適切な条件を見出すのに予備実験を行う必要があり、この予備実験に当初の想定より時間を要したため、実験の進捗がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
まず、cochlear whole mount法と切片法で作成した蝸牛の標本を抗TrkB抗体、抗TrkC抗体を用いて免疫染色を行い、共焦点顕微鏡で観察し、TrkBとTrkCの局在の解明を試みる。 次に、拘束浸水ストレス負荷の有無による蝸牛内のBDNFとNT-3の発現量の変化をWestern blotting、ELISA、定量RT-PCRなどで定量評価する。TrkBとTrkC、グルタミン酸受容体の発現の変化を蛍光免疫染色により観察する。 最後に、音響曝露(初年度に設定した条件)前のストレス負荷の有無による内有毛細胞シナプス障害の差異と上記の蝸牛内のBDNFとNT-3の発現量の変化の相関性を解析し、ストレスがcochlear synaptopathy発症に関与する機序について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験の進捗がやや遅れており、初年度内に免疫染色に用いる抗体や実験動物の新たな購入に至らなかったため。 未使用額を用いて、初年度に行う予定であったものの行うに至らなかった実験を次年度に併せて行う予定である。
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