研究課題/領域番号 |
20K22996
|
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
渡部 直人 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 特任助教 (40882030)
|
研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
|
キーワード | 再生医療 / 変性半月板 / 関節液 / 滑膜間葉系幹細胞 |
研究実績の概要 |
関節液を播種し培養すると、細胞のコロニーを形成し、このコロニー形成細胞は間葉系幹細胞の特性を有する。このコロニー数から関節液中の間葉系幹細胞数を推定できる。関節液中の間葉系幹細胞は、滑膜由来の間葉系幹細胞に遺伝子プロファイルが類似し、主に滑膜から動員されるものと推察される。関節液中の間葉系幹細胞数は、関節液中のタンパクにより規定されるものと仮定し、今回、関節液中幹細胞数と関連する関節液中タンパクの同定を試みた。 半月板変性断裂に対し半月板修復術と滑膜採取を行い、2週後に関節液を採取した。対象は5例(男性4名、女性1名)年齢51±3歳である。関節液の細胞成分を60cm2dishに3枚ずつ播種し、14日間培養後、Crystal Violet染色してコロニー数を評価した。また、関節液の上清のプロテインアレイを用いて、506種類のタンパク発現を測定した。関節液あたりのコロニー数と各タンパク濃度との関連を解析し、相関係数が0.70以上または-0.70以下のものを抽出した。 関節液あたりのコロニー数は10個から120個、平均36±17個であった。506種類のタンパクの中で、相関係数0.70以上のものは9種類(EN-RAGE、FGF-10、Glypican 3、HRG1-alpha、ICAM-3、LFA-1 alpha、MCP-3、S100A10、Ubiquitin+1)、-0.70以下のものは3種類(Angiopoietin-4、BCMA、beta-NGF)であった。最も強い相関を認めたのはHRG1-alphaで相関係数は0.93であった。 コロニー数と関連があるタンパクは細胞増殖や細胞接着に関連するものが多かった。これらの機能を解析することにより、滑膜から関節液中に間葉系幹細胞が動員される機序の理解が進むことが期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
準備状況としてのプレ実験と条件検討が十分にできていたことと、その後の本実験の結果も再現性のあるデータがすぐに採取できたため。
|
今後の研究の推進方策 |
遊走能に関して、条件を満たす蛋白は3種あり、入手可能なものはcalcitonin gene-related peptide (CGRP)とhepatocyte growth factor (HGF) であった。Migration assayで、CGRPとHGFは用量依存性に遊走細胞数を増加させ、negative controlと比較し10-8MのCGRPと10 ng/mlのHGFでは遊走細胞数が有意に多かった。さらにCGRPとHGFは相加的に遊走細胞数を増加させた。 以上の結果から、膝の手術後、内在性のCGRPとHGFのシグナルは独立に作用し、滑膜から関節液中に間葉系幹細胞を動員することが本研究から示唆される。これを立証するためにはin vivoモデルを用いて各蛋白が滑膜から関節液中に間葉系幹細胞を動員するか更に検討する必要がある。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今後のデータの再解析およびin vivo実験に備えた実験を行う必要があるため。
|