研究課題
私たちはこれまで、膝関節内組織損傷後や半月板手術後に関節液中のコロニー形成細胞数が増加すること、及びこれらの細胞は滑膜由来の間葉系幹細胞に類似することを報告した。これらは関節内の組織損傷や手術の刺激により関節液中の蛋白濃度が変化し、滑膜から間葉系幹細胞が動員される機序の存在を示唆する。本研究では手術後の関節液中の間葉系幹細胞数と蛋白濃度との関連を検討し、さらにin vitroでの解析を加え、関節液中に間葉系幹細胞が増加する機序の解明を試みた。半月板変性断裂に対し半月板修復術と滑膜採取を行い、2週後に関節液を採取した。対象は7例(男性6名、女性1名)で年齢48±9歳である。採取した関節液の半分を用いて抗体アレイを行い、507種類の蛋白の濃度を測定した。また関節液の半分をディッシュ上に播種し、2週間培養後、コロニー形成数をカウントした。各蛋白濃度とコロニー数との相関関係を解析し、r=0.70以上の相関を示し、かつp=0.05未満となる蛋白を同定した。その蛋白についてmigration assayを行い、径8μmの孔を通過してチャンバー間を遊走した細胞数をカウントした。条件を満たす蛋白は3種あり、入手可能なものはcalcitonin gene-related peptide (CGRP)とhepatocyte growth factor (HGF) であった。Migration assayで、CGRPとHGFは用量依存性に遊走細胞数を増加させ、negative controlと比較し10-8MのCGRPと10 ng/mlのHGFでは遊走細胞数が有意に多かった(p<0.05)。さらにCGRPとHGFは相加的に遊走細胞数を増加させた。膝の手術後、内在性のCGRPとHGFのシグナルは独立に作用し、滑膜から関節液中に間葉系幹細胞を動員することが本研究から示唆される。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
Bone & Joint Research
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Orthopaedics & Traumatology: Surgery & Research
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