好酸球性副鼻腔炎は嗅覚障害や気管支喘息の合併率が高く、鼻腔内にポリープ(鼻茸)が多発し再発率が高い難治性疾患であり、原因としては未だ不明な点が多い。申請者は、環境的な要因のひとつとして細菌叢のマイクロバイオームに着目し研究を行ってきた。本研究では、好酸球性副鼻腔炎における真菌叢マイクロバイオーム解析を行い、病態解明につなげることを目的とする。具体的には、好酸球性副鼻腔炎の鼻腔に存在する真菌叢のマイクロバイオームを網羅的に同定し、すでに研究成果として得られている細菌叢のマイクロバイオームと統合することにより、好酸球性副鼻腔炎の病態に関与する微生物叢(細菌叢・真菌叢)を明らかにする。 研究代表施設および研究協力施設において、慢性副鼻腔炎(好酸球性副鼻腔炎・非好酸球性副鼻腔炎)と診断された患者200名から鼻腔ぬぐい液の検体を採取した。収集したぬぐい液200名からDNA抽出キットを使用して微生物叢由DNAを抽出した。抽出されたDNAにはヒト由来DNAの他、細菌、真菌、植物などの共生物が含まれる。真菌叢マイクロバイオーム解析については internal transcribed spacer(ITS)領域を増幅するプライマーを使用した。次世代シークエンサーにて増幅した塩基配列を測定し、菌種の種レベルまで系統分類を行った。測定結果には一部、真菌以外の塩基配列が認められため、プライマーやPCR条件を検討し、効率よく真菌DNAを増幅できる実験条件を定め、真菌のみの塩基配列データを取得した。得られたデータから好酸球性副鼻腔炎と非好酸球性副鼻腔炎を比較し、真菌叢の多様性や同定できた真菌種について解析を行った。好酸球性副鼻腔炎では重症度が高くなるにつれ、ある特定の真菌種が減少していることが判明した。
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