研究実績の概要 |
癌細胞株の培養上清を用いたプロテオーム解析の結果、我々はGDF15 propeptide(GDPP)を血中で測定可能な新規タンパクとして同定した。GDPPは特に前立腺癌細胞株の培養上清で高発現していたがその前駆体であるpro GDF15は骨芽細胞・破骨細胞・骨細胞いずれの細胞株でも発現していることを見出した。 当科でバンキングしていた前立腺癌・尿路上皮癌・腎癌患者(合計209例、骨転移107例)と健常者(59例)の保管血漿を用いてGDPP値を検討したところ骨転移診断におけるAUCは前立腺癌・尿路上皮癌・腎癌でそれぞれ0.90,0.87,0.81と高値でありALPではそれぞれ0.65,0.87,0.67でありいずれにおいてもGDPPの方がAUCが高値であった。また、前立腺癌骨転移患者の骨シンチグラフィーのBSIとの相関を調べたところ、GDPPは相関しており(r=0.81)これはPSA(r=0.41)やALP(r=0.13)やmGDF15(r=0.45)よりも有意に相関している(いずれもp<0.05)という結果であった。 つまり我々が見出した血中GDPP値測定は泌尿器癌において従来の臨床で用いられている血中バイオマーカーよりも骨転移を鋭敏に診断できかつ、骨転移量と強く相関している可能性が示された。 またGDPPはfurinによりpro GDF15から分解されるが、furin阻害剤を用いることで細胞内にpro GDF15が貯留しかつ細胞外にはGDPPもmGDF15も放出されないことも見出した。 今後は泌尿器癌に限らず、癌腫横断的に骨転移の病態とGDPPが関連することを検討しつつGDPPの機能解析をvivoとvitroで行っていく。
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