突発性難聴は急激に発症する感音難聴である。その原因は未だ不明であるが、内耳の循環障害説が唱えられている。われわれは以前より、一過性内耳虚血の動物モデルを用いて、虚血性の内耳障害の発生機序や、成長因子の虚血性内耳障害に対する保護効果について研究してきた。一方で、再生医療の分野において成長因子を豊富に含有する多血小板血漿(Platelet Rich Plasma:PRP)を用いた治療が注目されており、すでに臨床の現場でも実用化されている。今回、このPRPの鼓室内局所投与の虚血性内耳障害に対する有効性を、聴力、内有毛細胞の脱落率などの指標を用いて検討し、臨床応用の可能性を探究する。 本研究では、一過性内耳虚血モデル動物を用いて、その虚血性内耳障害に対するPRPの有効性を検討し、突発性難聴の新たな治療法の開発に寄与することを目的とする。我々のグループは、以前より成長因子による内耳保護効果について研究してきた。これまでに、IGF-1 やGDNF などの成長因子、また成長因子を分泌する幹細胞や骨髄単核球細胞の、虚血性内耳障害に対する防御効果を明らかにした。様々な成長因子を豊富に有するPRPは、同様に内耳保護効果をもつことが期待される。PRPは、成長因子の単独投与よりも効果的である可能性があり、さらに幹細胞や骨髄単核球細胞と比べて簡便に採取可能な点からも臨床の現場で実用化しやすく、その有効性が解明されれば新たな治療法として期待できる。PRPの投与方法としては、安定した局所濃度を保つために、ゼラチンハイドロゲルを用いた局所への徐放投与が有効であると考える。
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