研究課題/領域番号 |
20K23005
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
小柳 俊人 九州大学, 医学研究院, 学術研究員 (80880690)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 遺伝性疾患 / 網膜色素変性 / 次世代シークエンサー / 遺伝子変異 / 臨床的意義不明 |
研究実績の概要 |
網膜色素変性(retinitis pigmentosa: RP)は、網膜の変性により進行性の視覚障害をきたす遺伝性疾患群で主要な失明原因疾患の一つであるが、遺伝的な原因が不明な症例が依然として半数以上に存在する。その原因の可能性の一つとして臨床的意義不明の変異(variants of unknown significance: VUS)の関与が考えられる。本研究では、定型RP症例に検出されるVUSを対象に、家系解析や多様なデータベース情報を統合し病的意義を判定し、新規病的変異の同定、遺伝子診断率の向上及び患者さんへの遺伝カウンセリングの際に重要な変異レベルのエビデンスを創出することを目的とする。 昨年度は九州大学病院眼科における患者さん及びご家族を主な対象とし、American College of Medical Genetics (ACMG)、Association of Molecular Pathology (AMP), College of American Pathologists (CAP)の提唱するガイドライン (Richards S et al., 2015)での評価に必要な症例毎の詳細な臨床情報および遺伝情報の追加取得を行い、検出された変異の評価を行った。今年度も引き続き、遺伝子解析を進め、臨床情報および遺伝情報をもとに変異の病的意義の判定及び変異レベルのエビデンスの創出を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
症例毎の臨床情報の追加取得、遺伝子情報の再解析及び追加シーケンスを行い、九州大学病院眼科における既存の臨床情報及び変異情報のデータベースの更新を行った。遺伝子検索後の症例については、The Japanese Retinitis Pigmentosa Registry Project (JRPRP)というデータベースへの登録を進めた。それらの情報を用いた変異情報と各種臨床情報との層別解析を施行し、遺伝的な原因が不明な症例の臨床的な特徴を検証した。また、新規報告された原因遺伝子変異及びデータベース情報等の更新に伴い数十例に検出された変異の中にはpathogenicもしくは likely pathogenicと判断されうる変異が存在することを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、遺伝子解析を進め、臨床情報および遺伝情報をもとに変異の病的意義の判定及び変異レベルのエビデンスの創出を進めていく。上記評価を行っても未だVUSに属する変異については、変異の解釈のために必要な新規の評価方法を検討する。VUSから病的意義を持つと新たに報告された変異に関して、表現型と遺伝子型の関連解析も進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度、評価対象の全症例に対するシーケンスが行えなかったため、次年度に未施行の症例に対してシーケンスを行う予定である。また、データ解析に必要な機材や発表及び文献化のために使用予定である。
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