1.慢性腰背部炎症モデル広範性痛覚過敏における扁桃体中心核(CeA)の関与 傍脊柱起立筋にComplete Freund's Aduvant(CFA)を注入し、長期にわたる炎症を引き起こしたところ、3カ月間にわたり両下肢に痛覚過敏が生じることを見出した。臨床においても慢性腰痛患者に広範性痛覚過敏が起こることは知られている。この広範性の痛覚過敏におけるCeAの関与を検討するために、VGAT-creラットの右CeAにcre依存的にhM4Di受容体を発現させ、アゴニストであるclozapine-N-oxideの腹腔内投与によりCeAのGABAニューロンを抑制したところ、この痛覚過敏が減少した。このことから慢性腰部痛における広範性痛覚過敏には、CeAのGABA作動性ニューロンが関与していることが示唆された(Tokunaga et al 2022)。 2.CeA内の痛覚過敏に関与する細胞集団とその機能の検証 CeA内では外側部に比較的限局して発現しているOxytocin receptor(Oxtr) のcreマウス右CeAにhM3Dq発現ベクターを注入し、cre recombinase依存的にhM3Dqを発現させた。3-4週間後アゴニストであるDeschloroclozapine(DCZ)を腹腔内投与し、行動観察を行った結果、下あごを床に擦り付ける特徴的な行動パターンを示した。また、DCZ投与3時間後に脳をサンプリングし,最初期遺伝子c-fosの免疫染色を行い,CeA内Oxtr陽性ニューロン活性化による脳内c-fos発現パターンを検討した。その結果、扁桃体、分界条床核、島皮質、中脳周囲灰白質、腕傍核などでc-fos発現が認められた。今後もこの特徴的な行動について検討を行う。 本研究より、慢性腰部痛における広範性痛覚過敏において、CeAの活動抑制が今後の治療ターゲットとなる可能性が示された。
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