研究課題/領域番号 |
20K23012
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
水上 優哉 近畿大学, 医学部, 助教 (20881163)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 骨再生 / 間葉系幹細胞 / 細胞スフェロイド |
研究実績の概要 |
間葉系幹細胞(MSC)の骨再生治療法への応用が期待されている。これまでにスフェロイド化したMSCを骨に移植することにより、高い骨再生効果が得られることが報告されている。一方で、スフェロイド化により骨再生効果が向上するメカニズムについては不明であり、これを解明することが本研究の目的である。 また本研究では、ヒトにおいても容易に大量調製可能であり、臨床応用が強く期待されている脂肪由来間葉系細胞(ADSC)を用いた。ADSCのスフェロイド化が骨再生効果に及ぼす影響は明らかになっていない。 2020年度は、骨再生治療におけるADSCスフェロイド移植の有用性を検証するために、ADSCスフェロイドの移植法および評価系の確立を行った。マウス大腿骨に直径0.8 mmの骨欠損を作製し、100000細胞相当のADSCスフェロイド、もしくは分散細胞を搭載したゼラチンハイドロゲルを骨欠損部に被覆した。移植6日後に、マイクロ-CTを用いて骨欠損部を観察した結果、分散した細胞を移植した群では非移植群と比較して有意な骨再生効果は見られなかった。一方で、スフェロイドを移植した群では、非移植群と比較して有意な骨再生効果が見られた。また、骨欠損部のサンプルを回収し、軟骨マーカー(Aggrecan、Ⅱ型、Ⅹ型コラーゲン)と骨マーカー(Runx2、Osterix、ALP、Osteocalcin)のmRNAの発現を評価した結果、ADSC移植群では軟骨マーカーが上昇する傾向が見られた。これらの結果から、ADSCのスフェロイド化により軟骨細胞に関連したメカニズムで骨再生効果が向上することが明らかとなった。 現在、骨欠損部の組織学的評価からさらに詳細な骨再生メカニズムの解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は、骨再生治療におけるADSCスフェロイド移植の有用性を評価するための実験系を確立するとともに、ADSCのスフェロイド化が他のMSCと同様に骨再生効果を向上することを明らかにした。上記の実験系の確立により、以後の研究において、ADSCスフェロイドが各骨再生フェイズおいて重要な役割を示す細胞やタンパク質に与える影響を解析することが可能となった。また、骨再生遅延を引き起こす動物モデルを当実験系に応用することで、臨床課題に則した骨再生治療におけるADSCスフェロイドの有用性を評価することが可能となった。 以上の理由より、本研究はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、骨再生遅延病態の骨再生におけるADSCスフェロイド移植の有用性を明らかにするとともに、ADSCスフェロイド移植による骨再生活性化メカニズムの解明を目的に当初の計画に基づいて以下の方策により研究を推進する。骨再生遅延動物モデルとして、ストレプトゾトシン誘発性糖尿病モデルマウスに対するADSCスフェロイド移植の骨再生効果を検証する。ADSCスフェロイド移植による骨再生活性化メカニズムの解析として、ADSCスフェロイドを移植した骨欠損部の炎症期(2日後)、早期形成期(4日後)、骨形成期(6日後)、リモデリング期(21日後)における骨再生に主要な細胞マーカーのmRNA発現および組織学的解析を行う。具体的には各過程において間葉系幹細胞の分化マーカー(骨芽細胞分化:Runx2、Osterix、ALP、Osteocalcin、軟骨細胞分化:Aggrecan、Ⅱ型、Ⅹ型コラーゲン、脂肪細胞分化:PPARγ, aP2)のmRNA発現レベルをRT-PCR法により解析する。また、各過程における骨組織切片中の骨修復関連細胞を染色(骨芽細胞:ALP、Osterix、軟骨細胞:アルシアンブルー染色、破骨細胞:TRAP染色、血管内皮細胞:CD31、マクロファージ:F4/80)する。また、上記検討により予想されたメカニズムをもとに、細胞間相互作用に基づく詳細な検討を行う予定である。
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