研究課題/領域番号 |
20K23014
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
田中 志典 東北大学, 大学病院, 助教 (60637958)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 制御性T細胞 / 樹状細胞 / 活性型ビタミンD3 |
研究実績の概要 |
制御性 T 細胞 (Treg) は自己に対する免疫応答や、常在細菌叢などの無害な非自己に対する過剰な免疫応答を抑制する重要な働きをもつ。そのため、Treg の機能障害は自己免疫疾患や、外界とのバリア面である皮膚や腸管粘膜の炎症を引き起こす。他方、Treg を増強する治療戦略は自己免疫疾患や炎症性疾患に有効である。 これまでの研究で、皮膚への活性型ビタミン D3 塗布は Treg を全身性に増加させ、糖尿病および脳脊髄炎の治療に有効であることがマウスモデルによって示された。本研究では活性型ビタミン D3 塗布後の Treg の増殖動態や特性、Treg 増殖を担う樹状細胞サブセットを解析し、新たな治療応用の可能性を提示することを目的とした。 マウスの耳介皮膚に活性型ビタミン D3 を塗布後、全身のリンパ節および脾臓で樹状細胞の解析を行ったところ、皮膚所属リンパ節において遊走性樹状細胞数が増加した。さらに、これらの樹状細胞では共刺激分子の発現が上昇しており、in vitro で共刺激分子依存性に Treg 増殖を促進した。樹状細胞の所属リンパ節への遊走は主にケモカイン受容体 CCR7 に依存する。そこで野生型もしくは CCR7 欠損マウスに野生型 Treg を移入し、皮膚への活性型ビタミン D3 塗布後の Treg 増殖を検討したところ、CCR7 欠損マウスでは Treg 増殖が低下した。リンパ球の移動を阻害する薬剤を使用し Treg の増殖場所を検討したところ、Treg は主に皮膚所属リンパ節で増殖し、そこから他組織へと移行し、全身性に増加するメカニズムが示唆された。 以上から、活性型ビタミン D3 塗布による全身性 Treg 増殖には皮膚の遊走性樹状細胞が重要な役割を担うことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画の遂行に要する期間は2年間を予定している。これまで(1年目)に、活性型ビタミン D3 塗布後の Treg の増殖動態や、Treg 増殖を担う樹状細胞サブセットを明らかにすることができた。これは当初の計画通りであり、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後、活性型ビタミン D3 塗布によって増強した Treg の特性、特に炎症部位への Treg 移動に関与するケモカイン受容体の特定を進める。そのために、網羅的なケモカイン/ケモカイン受容体の発現解析や、マイクロアレイ解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため、国内旅費を使用しなかった。また、マイクロアレイ解析を保留したため、その委託費を使用しなかった。引き続き国内外の移動が難しければ、旅費の分を消耗品費に回し実験の充実を図る。マイクロアレイ解析は次年度に行う。
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