研究課題
制御性 T 細胞 (Treg) は自己に対する免疫応答や、常在細菌叢などの無害な非自己に対する過剰な免疫応答を抑制する重要な働きをもつ。そのため、Treg の機能障害は自己免疫疾患や、外界とのバリア面である皮膚や腸管粘膜の炎症を引き起こす。他方、Treg を増強する治療戦略は自己免疫疾患や炎症性疾患に有効である。これまでの研究で、皮膚への活性型ビタミン D3 塗布は Treg を全身性に増加させ、糖尿病および脳脊髄炎の治療に有効であることがマウスモデルによって示された。本研究では活性型ビタミン D3 塗布後の Treg の増殖動態や特性、Treg 増殖を担う樹状細胞サブセットを解析し、新たな治療応用の可能性を提示することを目的とした。マウスの耳介皮膚に活性型ビタミン D3 を塗布後、全身のリンパ節および脾臓で樹状細胞の解析を行ったところ、皮膚所属リンパ節において遊走性樹状細胞数が増加した。さらに、これらの樹状細胞では共刺激分子の発現が上昇しており、in vitro で共刺激分子依存性に Treg 増殖を促進した。皮膚所属リンパ節の遊走性樹状細胞画分にはランゲルハンス細胞、1 型と 2 型の古典的樹状細胞(cDC1, cDC2)、1 型と 2 型のマーカーを発現しない二重陰性古典的樹状細胞(DN cDC)が含まれる。この中で、遊走性 cDC2 および DN cDC が、活性型ビタミン D3 塗布後、高い Treg 増殖促進能を示した。また、活性型ビタミン D3 塗布後に増殖する Treg では、皮膚への遊走に関わることが知られるケモカイン受容体 CCR4 の発現が増加していた。以上から、活性型ビタミン D3 塗布による全身性 Treg 増殖には皮膚の遊走性樹状細胞が重要な役割を担い、皮膚所属リンパ節で Treg 増殖が誘導されることが明らかとなった。
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