研究課題/領域番号 |
20K23019
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
高野 晃 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 非常勤講師 (50880209)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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キーワード | Endodontics / LAI / Er:YAG laser / root canal irrigation / PUI / fractured instruments |
研究実績の概要 |
歯牙の長期保存において根管治療は非常に重要な治療ステップの1つであるが、清掃が困難な歯牙の形態の複雑さから、再治療を要したり抜歯が必要となるケースが多くある。良好な治癒を目指すには、歯牙の中にある根管の細菌数を減少させる必要があり、その手技の1つに根管洗浄がある。また治療過程で清掃用の器具が根管内に折れ込むことも報告されており、除去も困難なことが多い。近年Er:YAGレーザーを応用したレーザー洗浄(Laser-activated irrigation: 以下LAI)が効果的であるとの数多くの報告が存在し、本研究ではそこに着目をして、破折器具を有する根管にLAIを行い、蒸気泡の挙動解析およびその清掃性を評価することを目的とした。 破折器具がある根管を想定して、40本のJ字型透明根管模型に清掃用器具であるステンレススチール製のKファイルまたはNiTi製のファイルを折れ込み、LAIおよび超音波洗浄法(passive ultrasonic irrigation: 以下PUI)を行い、破折器具根尖測領域の蒸気泡の挙動解析を行った。またヒト抜去歯根30本に器具を折れ込み、LAI、PUI、シリンジ洗浄を行い、走査電子顕微鏡を用いてHulsmannらのスコア分類に準じ清掃性を評価した。NiTiファイル群はKファイル群よりも蒸気泡の速度および数が有意に高く、LAI群はPUI群よりも有意に高かった。またLAI群はPUI群およびシリンジ洗浄群と比較して有意に清掃性が高かった。 本実験条件では根管内破折器具より根尖測において、破折器具の種類によって清掃挙動が変わる可能性があるものの、LAIは他の洗浄法よりも高い清掃性を示した。根管内破折器具の問題点は、それ自体の存在よりも根管清掃が困難なことにあるが、破折器具根尖測の洗浄が可能であれば、除去できない難症例の成功率向上に寄与する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Er:YAGレーザーを応用した根管洗浄の臨床的手技の確立に近づいてきている。 清掃性についても評価できている。今後は安全性との総合的評価が必要であるが、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は2方向から水流挙動の解析を行い、今まで二次元的に評価していたLAIの水流挙動について、三次元的に評価を行うと考えている。そうすることで、より詳細なLAIの水流挙動が解析でき、臨床的手技への応用や安全性の評価、清掃性の向上に寄与できるものと考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染症の影響により、研究期間を延長した。そのため、今後三次元的動画解析を行うための購入費用を次年度に使用することとした。
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