研究課題/領域番号 |
20K23028
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
西尾 文子 広島大学, 病院(歯), 歯科診療医 (00881294)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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キーワード | PEEK / 金属代替材料 |
研究実績の概要 |
PEEKは材料加工性が高く、成分中に抗菌剤を含有しても、物性を安定させることが可能である。PEEKは国内外において、新規歯冠修復材料として大きく注目されており、インプラントに用いるなど様々な研究が行われている。さらに、近年パラジウム等歯科用貴金属の価格高騰が新たな問題となっており、価格変動の少ない材料に対する需要が増している中、 安定した供給が可能であるPEEKのような金属代替材料の解明は急務である。申請者らは国内初となるCAD/CAMによるPEEK冠の臨床研究に着手し、患者20名に対して歯冠色PEEK冠を装着し経過は良好であった(jRCTs062180040、UMIN000032043、大臼歯PEEKクラウンの臨床評価)。しかしながら、臨床研究で使用しているPEEK冠自体には抗菌作用はなく口腔内環境が劣悪な者においては歯冠修復物と 歯質の界面へのプラーク付着による歯周炎や二次齲蝕を引き起こす懸念がある。そこで、申請者はPEEKの高い材料加工性に着目し、材料に抗菌性を担持することで付加価値をもつ歯冠修復物を開発することを着想した。抗菌剤には、熱安定性に優れ材料内に固定化可能である銀ナノ粒子を用いた。本研究の抗菌成分を含有したPEEKのように付加価値のある歯冠修復材料を開発し、臨床に用いる着想は国内外通して初の試みである。抗菌成分を含有する歯冠修復材料の開発が成功すれば、口腔内に食いしばりなどによる問題を抱える若年者や健常者のみならず認知機能が低下した高齢者に対して定期的に行う必要のある口腔ケアの効果を増強させ、より口腔衛生状態を改善させることが可能となると考えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は、JIS Z 2801に準じた試験規格にてフッ化ジアンミン銀38%溶液に1週間浸漬した試験片および銀ナノ粒子0、1、2および4%を混和した試験片のミュータンス菌に対する抗菌試験を行った。結果、銀ナノ粒子0、1、2および4%を混和した試験片については抗菌性がみられず、フッ化ジアンミン銀38%溶液に1週間浸漬した試験片については抗菌性がみられた。その後、銀ナノ粒子を混和した試験片表面をXPSにて観察し、表面に銀イオンが検出されるかを確認した。その結果、銀は検出されなかった。この結果から抗菌性を発揮しなかった理由として、表面に抗菌性を発揮する銀イオンがないためと考えられる。 また、歯冠色PEEKのレントゲン不透過性についてもレントゲン撮影を行い、医科用CT装置にて撮影を行った際にハレーション等見られず誤飲誤嚥が起こった際には胸部CT撮影が望ましいことが明らかになった。前述の内容は現在論文投稿中である。 さらに臨床に用いる際に不可欠な研磨のプロトコルを模索しており、様々な器具を用いてPEEKの研磨を行った。概ね実験は終了しており、現在論文投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、研磨の完了した状態のPEEKを用いて三点曲げ試験等を行い、強度に問題がないことを確認する。また、抗菌活性試験をATPアナライザーにてATP濃度測定をすることで銀ナノ粒子を含むPEEKがミュータンス以外であれば抗菌性を有するか検討予定である。さらに、接着性についてもプライマーや接着性レジンセメントとの組み合わせで最も適したものを模索する。 さらに、臨床に用いる際に必要な情報があれば随時基礎実験を行い、発表していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、当初発表し、情報収集を計画していた学会への参加がかなわなかったことからそれに伴う移動等の予算が発生しなかったため、次年度使用額が生じた。 次年度使用額は、研磨の完了した状態のPEEKを用いて三点曲げ試験等を行い、強度に問題がないことを確認することや、接着性についてもプライマーや接着性レジンセメントとの組み合わせで最も適したものを模索すること、抗菌活性試験をATPアナライザーにてATP濃度測定をすることで銀ナノ粒子を含むPEEKがミュータンス以外であれば抗菌性を有するか検討する際に用いる予定である。 さらに、臨床に用いる際に必要な情報があれば随時基礎実験を行い、発表していく予定である。
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