2021年度に行ったミュータンス菌に対してJIS Z 2801 規格を用いて抗菌試験を行った結果、抗菌剤含有PEEK上で生育した菌のコロニー数は抗菌性を有しないPEEKと比較し減少していたものの、JIS Z 2801規格の定義する抗菌性を有する水準には達しなかった。この結果を踏まえ、2022年度は、X線光電子分光法にて抗菌性を有するPEEKの表面の分析を行い、表面に検出される銀は微量かほとんど見られない状態であることが判明した。そして抗菌性の低さの原因として表面に抗菌作用物質が露出していないためであると考えた。 また、PEEKの表面性状も菌の付着に影響を及ぼしていると考え、表面性状の表面荒さ等の分析を行った。結果、PEEKは既存の臨床にて用いられている研磨用バーを用いて研磨を行うことで0.2マイクロメートル以下の表面粗さを示すようになった。過去の報告より、歯冠修復物を含む口腔内装置の表面粗さは細菌付着やプラーク堆積、患者による舌感の観点から表面粗さ0.2マイクロメートル以下が望ましいとされている。そのため、PEEKは臨床にて用いるにあたり十分な表面の滑沢さを得られることが明らかになった。この内容は現在論文執筆中である。また、臨床の現場において口腔内装置や歯冠修復物の誤飲誤嚥のリスクはつきものである。そのため、歯冠色PEEKのレントゲン不透過性についてもレントゲン撮影を行い、医科用CT装置にて撮影を行った際にハレーション等見られずに部位の特定が可能であった。そのため誤飲誤嚥が起こった際には胸部CT撮影が望ましいことが明らかになった。前述の内容は現在論文投稿中である。
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