本研究課題の目的は、近年、抗炎症物質として注目を浴びているω3脂肪酸経口摂取時の歯周組織に対する抗炎症作用メカニズムを解明することである。具体的には①ω3脂肪酸が口腔内局所で直接分解されて、その分解産物(レゾルビンRevE1、プロテクチン)が抗炎症作用を発揮する。②腸管粘膜、腸内細菌叢で分解、生成したRevE1が血行性に歯周組織で抗炎症作用を発揮すると仮定して研究をデザインする。特に口腔内局所分解では、口腔内常在菌の関与も考慮する。これまでの先行研究は最終産物RevE1を直接局所投与する薬剤として使用目的の研究であったが、本研究課題では、食品として前駆体を摂取することでの恒常的な抗炎症作用に着目する。分解生成能を有する酵素、口腔内細菌を保有する人は、歯周炎を発症、進行しにくく、また保有しない人でもプロバイオティクスにより同様の効果を得られると考えられる。したがって、食による歯周炎の制御、また、通常の歯周病治療においては排除対象となる口腔内細菌を利用するという、歯周炎の予防、治療に対する新たなアプローチの開発に繋がることが期待できる。これまでの歯周炎モデルより骨吸収が重症化する歯周炎モデルマウスの作製を行い、ω3脂肪酸経口投与による歯周炎抑制効果の評価をマウス歯周炎モデルで検討した。事前に歯周病原細菌P. gingnivalis(Pg)の主な病原因子ジンジパインのリコンビナントを腹腔内投与することで抗体を作製させ、Pgを口腔内局所投与(1億CFU/3日毎、6週間)すると共に、ω3脂肪酸含有マウス食を与え、血清中と歯肉中のサイトカイン量の測定、歯槽骨吸収を評価した。これまでの歯周炎モデルより強い骨吸収が認められたが、コントロールのω6脂肪酸投与群と比較して、ω3脂肪酸経口投与群は炎症性サイトカイン量、骨吸収の抑制が認められた。
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