研究課題
1. 行動試験における実験条件の改善:昨年度に、歯周病原菌 Porphyromonas gingivalis (Pg)が放出した細胞外小胞 (OMV)をBalb/cマウス(30週齢・メス)に12週間腹腔内投与し、Y字迷路試験により自発行動量と交替行動率を測定したが、マウス個体間でばらつきが大きく、実験環境の最適化が課題であった。映像データを詳しく解析した結果、測定室の照度が迷路の侵入アーム選択に影響する可能性が生じたので、実験室にテントを設置し一定の照度下(2 lxs)で、再度実験を行った。その結果、各群間の自発行動量と交替行動率に有意差は無かった。Pg OMVは、今回の条件下ではマウスの認知機能に影響を及ぼさないと結論した。2. ヒト脳皮質ニューロン細胞株(HCN-2)の培養:HCN-2を入手し、細胞培養を開始した。増殖が著しく弱く、実験に用いる細胞数を確保できる培養条件を検討したが、最適化できなかった。そこで、実験計画を変更し、ヒトミクログリア細胞株を用いて、Pg OMVの炎症誘導能をリアルタイムPCRにより解析した。その結果、Pg OMVが炎症性サイトカイン遺伝子の発現を、gingipain依存的に亢進すると判明した。3. 脳組織における病態変化の検出:脳組織切片を作成し、Amyloid b及びミクログリア特異的蛋白質Iba1に対して、免疫組織染色を行った。Amyloid bの沈着に差はなかったが、Pg OMV投与群の海馬及び脳室周辺に、Iba1陽性の活性型ミクログリアを検出した。また、同マウスの脳室周辺においてgingipain陽性反応が検出された。Pg OMV投与マウスの脳ホモジネートにおいてTau 蛋白のリン酸化が亢進していた。以上より、Pg OMVが脳組織の神経炎症を誘導する可能性が示唆された。
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Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - Molecular Basis of Disease
巻: 1867 ページ: 166236~166236
10.1016/j.bbadis.2021.166236