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2020 年度 実施状況報告書

抗菌性炭酸アパタイト骨補填材の創製

研究課題

研究課題/領域番号 20K23032
研究機関九州大学

研究代表者

島袋 将弥  九州大学, 歯学研究院, 学術研究員 (40883434)

研究期間 (年度) 2020-09-11 – 2022-03-31
キーワード抗菌性 / 炭酸アパタイト / 抗菌元素 / 細菌感染 / バイオフィルム / 溶解析出法 / 銀 / リン酸銀
研究実績の概要

超高齢社会の突入を背景として硬組織再建術が急増しており、骨補填材を用いた外科的治療が積極的に行われている。これに伴い、骨補填材の埋植を原因とした細菌感染症が益々深刻化している。既存の骨補填材は、細菌感染に対して抵抗性を示さないため、細菌が材料に付着すると細菌感染症が惹起されてしまう。このため、骨補填材には、細菌制御能として抗菌性が必要不可欠である。本研究課題では、骨と同組成の炭酸アパタイトに着目し、当該材料の要素技術である溶解析出法を応用することで、炭酸アパタイトへの抗菌性付与が可能であると考えた。当該年度では、材料作製と抗菌性と硬組織適合性とを両立する至適濃度(Window)の探索を目的として研究を計画しており、概ね計画書通りに研究を実施した。研究実績として、炭酸カルシウムを前駆体として炭酸アパタイトを調整し、当該材料と硝酸銀との溶解析出反応によって表面にリン酸銀を生成した炭酸アパタイトの作製に成功した。当該材料のリン酸銀含有量は、溶解析出反応条件(反応時間や硝酸銀濃度)によって容易に制御可能であった。またリン酸銀の生成は、炭酸アパタイトの構造に無影響であり、多孔体構造や一軸貫通孔構造等の特異構造を維持することができた。さらに0.01, 0.1, 1, 10, 100 mmol/Lの硝酸銀溶液に室温で1時間浸漬した炭酸アパタイト試料を用いて、JIS規格に準拠した抗菌性評価を実施した結果、当該材料は全濃度条件で抗菌効果を発現することが明らかとなった。また骨芽細胞様細胞を用いた細胞毒性試験の結果、細胞毒性を示すリン酸銀濃度条件と細胞に無影響なリン酸銀濃度条件が明らかとなった。すなわち、windowの導出に成功した。これらの実績は、硬組織再建と細菌感染症防止を同時に達成する革新的な骨補填材の創製に発展し、良好な予後・QOL向上に貢献する可能性が極めて高い。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当該年度における本研究課題の目的は、①溶解析出法による炭酸アパタイトへの抗菌性付与と、②抗菌性と硬組織適合性とを両立する至適濃度の導出であった。①においては炭酸アパタイトと硝酸銀溶液との溶解析出反応によって材料表面にリン酸銀が生成されることを種々の材料工学的手法によって実証した。また②においては、細胞・細菌を用いたin vitro試験によって、抗菌性と硬組織適合性とを両立する至適濃度の導出に成功している。以上の理由から、おおむね順調に進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

今後の研究の推進方策として、当該年度で最適化した材料を用いて動物実験を実施し、抗菌性炭酸アパタイトの病理組織学的解析を実施する。実験の内容としては、ウサギの大腿骨に直径6 mm ・深さ3 mmの骨欠損を形成し、当該骨欠損を抗菌性炭酸アパタイト骨補填材によって再建する。移植後4、12週に試料を摘出し、アルカリフォスフォターゼ活性、オステオカルシン産生量の生化学的評価によって骨形成活性を明らかにする。立体的な骨の形成および材料の骨への置換状態は、マイクロCTと骨梁構造解析装置を用いて定量的に解析する。骨形成の詳細は、病理組織学的に評価する。また当該年度で実施した細胞毒性試験に加えて、新たに骨芽細胞様細胞を用いたin vitro硬組織適合性評価を実施する。抗菌性炭酸アパタイトが細胞増殖、酵素活性、石灰化挙動に与える影響を明らかにする。以上の検討により、細胞・組織レベルで材料を評価し、抗菌性炭酸アパタイトの創製に取り組む。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2020

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] Antibacterial Property and Biocompatibility of Silver, Copper, and Zinc in Titanium Dioxide Layers Incorporated by One-Step Micro-Arc Oxidation: A Review.2020

    • 著者名/発表者名
      Masaya Shimabukuro
    • 雑誌名

      Antibiotics

      巻: 9 ページ: 716

    • DOI

      10.3390/antibiotics9100716

    • 査読あり / オープンアクセス

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公開日: 2021-12-27  

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