研究課題/領域番号 |
20K23035
|
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
山本 祐士 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 助教 (50878270)
|
研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
|
キーワード | 摂食嚥下機能 / 非接触型3Dカメラ / 流体解析 / 鼻腔通気 / 小児 |
研究実績の概要 |
本研究では上気道通気障害と摂食嚥下の関係について明らかにし、鼻閉、アデノイド、口蓋扁桃肥大が原因で摂食嚥下に機能障害が疑われる小児に対し、その改善のために原因部位の特定と必要な対応をできるようにすることを目的にしている。 学術的「問い」として①上気道通気障害がある場合、通常の摂食嚥下に呼吸動態が加わるため、摂食嚥下の協調動作に影響が生じるのではないか。②鼻閉、アデノイドを認める場合、鼻呼吸が出来ず、口呼吸になるため、口唇は弛緩・離開し、舌は低位になり、これらの筋は常時低緊張になるため、筋機能の発達が遅れ、摂食嚥下機能に影響が生じるのではないか。③口蓋扁桃が肥大している場合、通気障害だけでなく、食塊の嚥下に影響するのではないか。この3点について明らかにする。 2020年度は、被験者の選定を行い、データの取得を行った。摂食嚥下機能は非接触型3Dカメラにて頭頚部の体表面の動作を計測し、同時に嚥下造影検査にて嚥下物の動態を撮影した。測定データと記録した映像を同期することで、体表面動作と嚥下動態の関連性を解析し摂食嚥下機能の評価を行った。また、CBCT撮影と鼻腔通期度検査を実施して、CBCTデータより上気道流体シミュレーションを用いて通気障害部位を検出し、障害部位ごとに顎運動の特徴を評価した。さらに口腔周囲筋のCT値から筋と脂肪の比率を分析し、筋繊維密度を部位ごとに評価した。口蓋扁桃肥大による嚥下時の通過障害の有無を検討するため、咽頭気道水平断面で最も狭窄した部位の断面積も測定した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
被験者は、鹿児島大学病院小児歯科に摂食嚥下障害の疑いで受診し、精査のため嚥下造影検査ならびにCBCT撮影が必要と判断された小児を対象とした。資料として、非接触型3Dカメラによる頭頚部の体表面動作の測定データ、嚥下造影検査にて得られた映像ならびに歯列拡大前後(Hass type, Hyrax type等)のCBCTデータとCBCT撮影時に行った鼻腔通気度検査データを使用した。 当初は30名を目標にデータの収集予定であったが、新型コロナウィルス感染症により受診患者数が減少したことで、対象患者が30名に満たなかった。しかしながら、これまでに得られた測定データならびに解析は継続中であり、対象患者を引き続き選定し、条件を満たす患者が来院された場合、研究への協力を依頼する予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画は、当初の予定から大きな変更はなく、以下のとおりである。 【資料】鹿児島大学病院小児歯科に摂食嚥下障害の疑いで受診し、精査のため嚥下造影検査ならびにCBCT撮影が必要と判断された小児30名の歯列拡大前後(Hass type, Hyrax type等)のCBCTデータとCBCT撮影時に行った鼻腔通気度検査データを使用する。 【方法】摂食嚥下時の運動は嚥下造影検査と同時に非接触型3Dカメラを用いて記録する(海外特許出願中PCT/JP2018/015342)。また、CBCTデータから、上気道通気障害部位の評価の為に上気道流体シミュレーションを用いて通気障害部位を検出し、障害部位ごとの顎運動の特徴を評価する。さらに口腔周囲筋のCT値から筋と脂肪の比率を評価し、筋繊維密度を部位ごとに評価する。口蓋扁桃肥大による嚥下時の通過障害の有無を検討するため、咽頭気道水平断面で最も狭窄した部位の断面積を計測する。これらの計測をもとに上気道通気障害が生じている小児の摂食嚥下機能に与える影響を明かにする。 【実施予定時期】2021年度は、前年度に引き続き、非接触型3Dカメラにより計測ならびに得られたデータを解析、上気道流体シミュレーションによりCBCTのデータを解析する。そして、得られたデータから上気道通気障害と摂食嚥下機能の関連性を統計学的に検討する。十分な結果ならびに考察が得られた場合は論文作成に取り掛かり、不十分と判断した場合は方法を再検討し、必要に応じてデータの取得から実施する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
現在、データの収集途中であり、収集終了後に被験者に対し謝金を支払う予定があり、解析データも膨大であることから、大学院生等に解析を依頼し人件費として算出予定である。 新型コロナウィルス感染症のため情報交換や学会参加による出張を控えていたため、次年度使用が生じた。2021年度は感染拡大が落ち着いている地域への出張の可能性があり、旅費の算出が増加すると考えらえる。 また、データの解析終了後は論文の作製を考えており、英文・和文の校正費や投稿費に使用する予定である。
|