口は消化器と呼吸器の両方の役割を果たしているため、鼻閉(鼻が詰まること)、アデノイド、口蓋扁桃肥大などにより上気道通気障害(鼻や喉の通りが妨げられること)が認められる小児では、口腔とその周囲組織に大きな負荷がかかり、摂食嚥下機能(食べたり飲みこんだりする機能)への悪影響が予想される。上気道通気障害は口呼吸を惹起し、口腔周囲筋の筋機能低下や協調運動の不調和、さらに嚥下時における食塊通過障害(咀嚼した食べ物が喉を通るのを妨げること)の一因となり、呼吸のみならず摂食嚥下機能にも影響する。これらは顎顔面領域の適切な形態的・機能的発育を阻害する可能性があると考えられるものの十分な検討がされておらず、呼吸機能と摂食嚥下機能の不調和を改善するための効果的な介入方法は確立されていない。 そこで本研究では、上気道通気障害ならびに摂食嚥下機能障害に対する効果的な介入方法を確立して臨床応用へ展開することを最終目標に据え、鼻閉、アデノイド、口蓋扁桃肥大が原因で摂食嚥下機能に問題を認める小児を対象とし、試料嚥下時における頭頚部の体表面動作(顔の表情や口唇などの口の周りの皮膚の動き)と嚥下動態(食べ物が喉をどのように通り食道に到達したか)に関する定量化と同時解析により、呼吸機能と摂食嚥下機能の関連性を解明し、適切な摂食嚥下機能の獲得を目指す。
|