研究課題/領域番号 |
20K23039
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
相馬 久実 日本大学, 歯学部, 専修医 (50875820)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 胎生期母体ストレス / セロトニン / 三叉神経節 |
研究実績の概要 |
近年、臨床の現場において、妊婦へのストレスによる負荷が流産・早産や低出生体重や胎児の子宮内発育遅延のリスクとなる他に、うつ病などの種々の精神疾患を引き起こすことが問題となっている。このようなことから、妊婦へのストレス負荷は妊婦だけでなく、胎児の脳神経系機能の発達過程にも可塑的変化を及ぼし、生後の脳神経系機能の発達障害が起こる可能性があると考えられる。しかし、胎児期における母体ストレスが生後の疼痛情報伝達機構にどのような可塑的変化を引き起こすのか不明である。そこで、本研究では、胎生期の母体ストレスに起因した成体期における一次侵害受容ニューロンの情報伝達変調メカニズムの解明を目的とした。妊娠ラットに対して胎生初期・中期・後期に1日3時間身体拘束を行うことで胎生期ストレスモデルを作製した。比較対照群には、胎生期ストレスを与えない正常ラット(naive)を使用した。成体期である生後7週目に口髭部への機械刺激に対する逃避閾値を計測し、機械アロディニアを評価した。Naive群と比較して、胎児初期、中期および後期ストレス群すべてにおいて有意な機械逃避閾値の低下が認められた。特に、胎生初期ストレス群は、胎生中期、後期ストレス群と比較して最も閾値が低かった。以上より、胎生期における母体ストレスは、成体期の口髭部機械アロディニアの発症に関与する可能性が示された。令和3年度は、既に胎生期ストレスによる増加が報告されているセロトニン(5-HT)とCC chemokine ligand 2 (CCL2) に着目して、胎生初期ストレスモデルの口腔顔面領域に発症する機械アロディニアの発症機構を明らかにしていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度は、①胎生期ストレスモデルの作製と成体期における口髭部機械アロディニアの発症有無の検討、②胎生期ストレスモデルのTGにおけるセロトニンおよびCCL2量の定量解析と、セロトニンまたはCCL2産生細胞とCC chemokine receptor type 2 (CCR2)陽性細胞の同定、③Tetrodotoxin-resistant voltage-gated sodium channel 1.8(Nav1.8)およびCCR2または5-HT受容体陽性TGニューロン発現の検討、および④胎生期ストレスモデルの機械アロディニア発症に対するCCR2または5-HT受容体の関与の検討、を予定していた。しかし、当初はモデル作製の際、胎生6日から17日への母体ストレスを予定していたが、胎生期のどの時期の母体ストレスがより影響を及ぼすかの検討を要したため、予定より多くの実験群が必要となった。さらに、新型コロナウイルスの蔓延により、実験の開始時期および実験実施時期が遅延したこともあり、上記②③④については未検討である。これらのことから、実験の進捗はやや遅れている、と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、胎生初期ストレスモデルの成体期である生後7週目でのTGにおけるセロトニンおよびCCL2量をWestern blottingまたはELISAを用いて定量解析し、免疫組織化学的手法によりセロトニンおよびCCL2産生細胞とCCR2陽性細胞を同定する。さらに、TGにおけるNav1.8およびCCR2または5-HT受容体陽性ニューロンの存在を免疫組織化学的に確認する。同モデルに対し、生後7週目にCCR2または5-HT受容体アンタゴニストをTGへ投与し、逃避閾値の変化を解析する予定である。その後、Naiveに対し、生後7週目にCCL2をTGへ投与し、逃避閾値の変化を解析する。胎生期ストレスモデルに対し、生後7週目にNav1.8アンタゴニストを口髭部へ投与し、逃避閾値の変化を解析する。本研究により、胎生期の過度なストレス負荷による成長後の口腔顔面痛の発症機序の一端を明らかにすることができるだろう。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度は新型コロナウイルスの蔓延により、学会に参加しなかったため、旅費を使用しなかった。また、新型コロナウイルスの感染拡大により実験の実施時期の遅延により試薬の購入が遅延したため、消耗品の使用金額が減額した。よって、次年度使用額が生じた。本年度も引き続き学会参加は困難である可能性が高いが研究は行える状況のため、前年度実行できなかったWestern blottingまたはELISAを用いて定量解析を行うなど、繰越金と令和3年度助成金を併せて使用する予定である。
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