研究課題/領域番号 |
20K23045
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
板井 俊介 東京大学, 医学部附属病院, 特任助教 (40878401)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | カヘキシア / 悪液質 / 炎症 |
研究実績の概要 |
WHOが公表する緩和医療の重点課題に疼痛、うつ、カヘキシア(悪液質)が挙げられており、その中でも本研究ではカヘキシアに着目した。カヘキシアは栄養摂取不足やがんによる全身性の炎症を誘引とした骨格筋の減少、肝代謝の変化などが関連しているとされており、それらの原因解明や診断のマーカーとなりうる関連項目の検索を最終的な目的と考えている。そこで本研究開始の初年度(約半年)として、実臨床に即し、なおかつ簡易に判断、検査が可能な項目を探索するため、まずは栄養摂取不足という観点から調査を開始した。令和2年度においては、栄養摂取不良の原因あるいはそれらの改善におけるポイントとなりうる観察項目の同定を行っている。
調査対象は65人の施設入院患者(平均年齢84.3歳)とし、相対的に食べること全体の評価が可能なKuchikara Taberu Balance Chart (KTBC)と、主に喉頭流入の評価する嚥下内視鏡を用いて評価を行った。本調査では喉頭流入の有無とKTBCのスコアの関連性についても評価した。 喉頭流入が無い患者においては、ある場合に比べ「呼吸状態」、「咀嚼」、「姿勢」の3つのスコアが有意に低いことが示された。これらの結果から、摂食嚥下においてはこれら3項目の評価が有用であり、栄養摂取不足、更にはカヘキシアの評価において利用できる可能性が示唆された。
今後は臨床だけでなく、カヘキシアの原因の1つである炎症性サイトカインといった分子生物学的な観点からの評価を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
カヘキシアの原因の1つである栄養不足。摂取不良に関しての評価項目についてなど、実臨床の観点における研究は比較的進んでいると考える。一方で炎症性サイトカインの関連性や機序など、分子生物学的な観点からの研究については当初の予定に比べ、現時点で有用性のある結果が出ていないため、進捗状況にやや遅れがあると考える。
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今後の研究の推進方策 |
研究初年度において、臨床の観点からのカヘキシアの誘引や評価項目の探索は進んでいるため、引き続きサンプル数を増やしつつ他の有益な項目の探索・精査を進めていく。 一方で、炎症性サイトカインなどの分子生物学的な視点からのカヘキシア誘引因子の探索を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度においては、研究を進めるに当たり必要となる実験器具や細胞、試薬等の物品が必須であり、次年度以降も当該助成金が必要になると考える。
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