研究課題/領域番号 |
20K23051
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
市村 典久 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (90770280)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | TUG1 / 口腔癌 |
研究実績の概要 |
Taurine up-regulated1 (TUG1)は複数の癌種で制御異常を認める長鎖非翻訳RNAであるが、口腔癌における機能は不明な点が多い。研究代表者はTUG1が口腔癌組織で高発現を認めること、TUG1のknock downにより癌細胞の増殖・遊走能が著しく減少することを既に確認しており、TUG1が口腔癌の発生・進展においてゲノムとエピゲノムを繋ぐKey moleculeであると考えた。本研究は口腔癌に対するTUG1の抗腫瘍効果を明らかにし、新規治療法の開発へと繋げることを目的とする。 令和2年度は主に細胞株を用いた実験を行った。TUG1をアンチセンス核酸にてknock downさせた数種類の口腔癌細胞株を用いて、TUG1のknock downに伴い発現が2倍以上変動する遺伝子をマイクロアレイにて網羅的に解析し、上位10遺伝子を抽出した。さらにReal-Time RT-PCR法を用いてvalidationを行うことで、TUG1の標的遺伝子を同定した。その中で代表者はMAPK(RAS/RAF/MEK/ERK)シグナル上に位置する遺伝子に着目した。MAPKシグナルは細胞外の様々な刺激を核内へと伝える主要なシグナル伝達系の一つであり、複数の癌腫でその異常が報告されている。口腔癌ではHRASの遺伝子変異が高頻度に確認されているがその意義は明らかにされていない。今後は引き続きTUG1とMAPKシグナルとの関係を詳細に解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画した実験は概ね遂行することができた。当初はTUG1のknock downをsiRNAで行う予定だったが、アンチセンス核酸を用いることで、より高率にTUG1の発現をknock downすることが可能となった。また、マイクロアレイで得られた結果を詳細に解析することで、これまで報告のない遺伝子がTUG1の標的となり得る可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は細胞実験に加え動物実験を予定しているが、引き続き令和2年度の細胞実験で得られたTUG1の標的遺伝子について、その遺伝子が位置するシグナルに着目して口腔癌で活性化されるpathwayの同定を試みる。本研究を通して新たな治療標的の同定を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度はCOVID-19の影響で参加・発表を予定していた学会に参加ができなかったこと、論文作成に時間がかかり投稿までには至らなかったこと、必要な試薬・器具の在庫に余裕があったことなどが挙げられる。そのため令和2年度で使用予定であった試薬を令和3年度分の予算で購入し、追加で実験を履行する。また、論文についても令和3年度分の予算で作成、投稿する予定である。
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