研究課題/領域番号 |
20K23064
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
高松 弘貴 昭和大学, 歯学部, 助教 (10878200)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 唾液腺オルガノイド / ES細胞 / iPS細胞 / 唾液腺間葉細胞 |
研究実績の概要 |
本年度の実験においては唾液腺間葉細胞の一部は神経堤由来であることを考慮し、唾液腺間葉細胞の誘導に向けた前段階の工程である神経堤細胞の誘導方法を検証した。誘導方法としては、これまで多くの報告がなされているヒト多能性幹細胞からの神経堤細胞の誘導方法を参考とした。本方法を選択した理由は、マウスES細胞から神経堤細胞を分化誘導する際の手法としての応用の可能性を検証する目的で行った。実験では、まずヒトiPS細胞からの神経堤細胞への分化誘導を行った。用いた細胞はフィーダーフリーの条件で維持・培養されているヒトiPS細胞の細胞株である201B7を用いた。具体的な分化誘導方法としてはマトリゲルでコーティングしたディッシュ上に単位面積当たり10000細胞の割合でヒトiPS細胞(201B7)を播種し、神経細胞の培養において必要な添加物であるN2(1%), B27(2%), bFGF(10ng/ml)を含むDMEM/F12培地(N2B27-CDM培地)で1日間培養した。その後、培養開始2日目よりN2(1%)に加えて低分子化合物であり細胞増殖、細胞分化等に関わる作用をもつTGF-β(2μM)、Wntシグナル活性化に関わるGSK3阻害剤(1μM)を含む培地(NCN2培地)で6日間培養を行った。培養1日目では細胞の形態は紡錘形であり維持培養しているヒトiPS細胞と大きな変化は認めない結果であった。培養開始3~4日目にはコロニー形成を認めた。コロニーを形成する細胞の形態としてはロゼット様を呈しており神経細胞への分化の可能性が示された。また経時的にそのコロニーは増大していった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
ヒトiPS細胞から神経堤細胞を分化誘導し培養7日目で形態的にはロゼット様を呈したが、RT-PCRで遺伝子発現解析を行ったことろ、神経堤マーカーとして報告されているSOX10,PAX3, AP-2などの発現を認めなかった。このため、マトリゲルコーティング等の培養条件の検討を行っていため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は現在検討中であるマウスES細胞、ヒトiPS細胞から分化誘導した神経堤細胞へ対しTGF-βやBMP-4を各種濃度で添加すること唾液腺間葉細胞の分化誘導を目指す。誘導した唾液腺間葉細胞の検証としては遺伝子発現をマウス胎生期唾液腺間葉(既に保有)、唾液腺上皮(既に保有)の遺伝子発現プロファイルと比較する。加えて、マウス胎生期顎下腺間葉で高発現を認めたマーカーとして報告のあるNr5a2, Negr1, Klf14, Satb2などのマーカーを用いて唾液腺間葉への分化を検証する。そして、胎生期マウス唾液腺上皮やマウスES細胞から誘導した唾液腺オルガノイドとの再構成器官培養を行い、器官培養後の評価としては分枝形態形成の有無、唾液腺マーカー(AQP5,K-18,K-5,α-SMA,Amylaseなど)を用いた組織学的解析やRT-qPCRによる遺伝子発現解析にて行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は、胎生期マウス唾液腺上皮と唾液腺間葉細胞の再構成器官培養に用いる妊娠マウスの購入や組織学的解析で用いる抗体等(AQP5,K-18,K-5,α-SMA,Amylase)の購入に用いる予定である。また、細胞培養に用いる試薬や唾液腺オルガノイド作出に必要なアデノウィルスの作成費用も必要となる。
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