研究実績の概要 |
光免疫療法とは、癌をターゲットとする抗体(mAb)とIR700の結合体を標的癌細胞表面の受容体に結合させ光を当てると癌細胞だけが死滅する新規の癌治療法である。本研究では、従来の光免疫療法で用いられる抗体の代わりにタンパク小分子 (Affibody) を用いることで、腫瘍深部への到達効率を上げたり、結合体が血液脳関門を効率的に通過するため脳腫瘍も治療できることを証明し、光免疫療法の可能性を広げることを目指す。 当初の研究実施計画では、下記の6項目を挙げていた。 ① EGFR1, HER2ターゲットのAffibody-IR700結合体を作製 ② EGFR1, HER2過剰発現癌細胞への特異的な結合を証明 ③ EGFR1, HER2過剰発現癌細胞に対する光免疫療法 ④ mAb-IR700結合体とAffibody-IR700結合体併用の光免疫療法 ⑤ 血液脳関門 (BBB)モデルを用いた通過実験 ⑥ 動物実験 このうち、2022年3月末時点で⑤を除いた⑥まで到達した。現在⑤の血液脳関門モデルを用いた検討を続けており、この結果が得られ次第、論文を執筆する予定である。⑤に時間がかかっている理由としては、このシステムが初めて使用するモデルであること、コロナ禍でシステムの調整を業者と対面で直接行うことが難しいことがあげられる。次第に上達はしているため、もう少しの検討で十分な結果を出すことは可能であると考える。 これまで得られた結果としては、EGFR過剰発現癌細胞において、Affibody-IR700結合体による光免疫療法で癌細胞をほぼ死滅させ、mAb-IR700結合体とAffibody-IR700結合体併用の光免疫療法によって、治療効率を上げることが出来た。動物実験でも同様の結果が得られ、これらの成果は、昨年度の歯科基礎医学会と日本口腔腫瘍学会で発表した。また、11月に関連論文を発表した。
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