研究課題/領域番号 |
20K23072
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
安達 奈穂子 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (00823650)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 口腔の健康 / う蝕 / 歯周病 / メタボリックシンドローム / 労働生産性 / プレゼンティーイズム / アブセンティーイズム |
研究実績の概要 |
近年口腔の健康状態と全身疾患との関連が注目されている。特に、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病と口腔疾患は、共通の原因を持つため、その関連について多くの検証が行われてきた。メタボリックシンドロームは、動脈硬化、心疾患、脳血管疾患、糖尿病等のリスクが高まることから、その予防は公衆衛生上重要である。 口腔の状態とメタボリックシンドロームとの関連については多くの先行研究が存在するが、メタボリックシンドローム発症をアウトカムとした縦断研究は少ない。そこで、本研究の目的は、口腔の健康状態とメタボリックシンドローム発症の因果関係を明確にすることと、口腔の健康状態と労働生産性低下の関連を検証することである。 第1の研究は、口腔状態とメタボリックシンドロームの発症(腹部肥満、高血圧、脂質異常、糖代謝異常)との因果関係を縦断研究にて検証し、その予測モデルを構築する。第2の研究は、口腔状態と労働生産性の関連を検証し、労働生産性の損失の程度を示す。 口腔保健を通じたメタボリックシンドローム予防への活用を目指し労働生産性との関連を示すことで、学際的に口腔の健康の重要性を提示し、人々のWell-beingの向上に寄与したい。 本年度は、主に既存データを用いた第1の研究の検証を続けながら、第2の研究についての基礎的な分析(初年度のデータを用いた横断分析)を行った。その結果、「歯の不具合による遅刻・早退・欠勤」の有無と口腔関連QOLが低いこと、「歯の不具合により仕事に集中できなかったこと」の有無とう歯、DMFTが多いこと、口腔関連QOLが低いこととの関連が示唆された。以上の結果から、健康経営という観点からも、労働者の口腔の健康を保持、増進するシステムの必要性があると考えられる。本分析は横断分析であるため、来年度労働生産性についてのデータを取得し、縦断分析を行うことで、より詳細な検証を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症蔓延の影響を受け、2020年度歯科健診が中止となったため、2020年度のデータ取得に至らなかった。文献のシステマティックレビューを進め、2019年度のデータを取得し、これまでのデータを用いた検証をしている。 来年度の質問紙調査に向けて、労働生産性、QOL等についてのデータの取得準備をすすめているところではあるが、歯科健診の実施および質問紙調査の実施時期および方法については、情勢を鑑みつつ調整することが必要である。万一、実施できない場合には、既存のデータを用いて、テキストマイニングの手法を用いる等、より応用的な分析を実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症の影響により、質問紙調査の実施は2021年に延期される見込みである。質問紙の完成、配布、回収、データ入力、データクリーニングを実施する。データを取得次第、2015年以降の既存データと連結し、ポワソン回帰分析、ロジスティック回帰分析、線形回帰分析、共分散構造分析、テキストマイニング等を用いて検証する。研究成果は、積極的な論文・研究発表を行い、ホームページ等でわかりやすく発信する。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響で質問紙調査の実施が遅延したため。次年度に実施予定で計画を進めているため、繰越金については計画通り使用する。
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