①薬剤性細胞老化について ヒト型抗RANKLモノクローナル抗体製剤(デノスマブ)を用いた顎骨壊死の動物モデルの報告はかなり少なく(血管新生抑制作用薬剤では動物モデルの報告がない)、動物モデル作成は困難であることがわかったが、RANKL抗体からモデル作成を進めた。また、細胞内代謝の解析として、破骨細胞、骨髄細胞、線維芽細胞にデノスマブを作用させた場合のニコチンアミドアデニンヌクレオチド・乳酸などの代謝産物の評価を行った。 ②EVs由来miRNAとその効果の解析について 骨髄由来間葉系幹細胞のEVsに含まれるmiRNAの網羅的解析の結果、特異的に含まれるmiRNAを幾つか同定した。中でもmiR-Xが老化関連遺伝子(Gene-Y)の発現抑制に関与していることが示された。In vitroでは、そのmiR-Xをラット骨髄壊死モデルに投与したところ、創傷治癒効果が得られた(組織学的評価および遺伝子学的評価を行なった)。またin vivoにおいては、Gene-Yの一部を組み込んだルシフェラーゼベクターを製作した。ルシフェラーゼアッセイによりmiR-XがGene-Yに結合して遺伝子発現に関与していることが明らかとなった。また、このmiR-Xが細胞老化に伴う疾患または症状の治療方法または予防方法として、特許出願した(出願日:2023年2月16日 出願番号:特願2023-22331号)。細胞外小胞やmiRNAについてはまだ未知の点が多く、患者を治療する可能性にはさらなる研究が必要である。
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