研究課題/領域番号 |
20K23078
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
上野 祥夫 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (50880118)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 術後レム睡眠リバウンド / 周術期管理 / 術後せん妄 |
研究実績の概要 |
本研究で、実験的術後レム睡眠リバウンドを発生させ、その発現過程の生理学的変化を分析するため、実験動物に、外科手術を施し、脳電図・眼電図・心電図,頚筋や呼吸筋の筋電図の記録電極を体内に設置した。手術後2週間、手術創の回復を待った。さらに、この間、次の睡眠行動を記録する環境に馴化させるため、馴化訓練を行った。馴化訓練を行った後、①コントロールとして実験的外科手術を施さないで睡眠覚醒行動を記録したもの、②麻酔による影響をみるためイソフルランによる全身麻酔を施して、睡眠覚醒行動を記録したもの、③さらにイソフルラン麻酔下で下顎骨を削合する手術を施し、その直後から睡眠を記録したもの、の3パターンの記録を実施した。睡眠覚醒行動記録は術後から術後3日目の間、防音箱内で頭部を記録ケーブルと連結し自由行動下で連続記録した。しかし、当初は8週齢のモルモットを対象に実験を実施したが、イソフルランによる全身麻酔を施行後の全身状態が安定しなかったため、イソフルラン麻酔の持続時間を3時間から1時間に短縮し、動物種をモルモットからラットに変更した。8週齢のラットを用いて、記録電極を体内に設置した。このプロトコールを変更したことで、当初計画したプロトコールで、睡眠覚醒状態を記録することが可能となった。今後は、実験を遂行して、収集したデータを解析して、睡眠覚醒状態の変化、脳波活動の等の評価を進めていく予定である。 以上の実験から、実験的術後レム睡眠リバウンドを発生させ、その発現過程の生理学的変化を明らかにすれば、様々な条件の負荷で増減する機序を解明する研究へと発展できるという重要な意義を持つ。また、術後レム睡眠リバウンドの病態生理を解明することは、周術期管理における様々なリスク要因の作用を理解し、関与が示唆されている術後せん妄や突然死を回避する臨床管理方法の開発において重要な役割を果たすと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍のため、大阪府では非常事態宣言が発令され、大学の方針で実験不可の期間が生じた。また、歯学研究科建物の改築工事に伴い、実験室の使用の制限や、代替環境の整備、さらに設備の移転調整が生じて実験を中断せざる得なくなった。また、実験プロトコールの見直しや、動物種の変更などの検討に時間を要したため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は実験動物をラットに変更するとともに、プロトコールに修正を加えて、全身麻酔持続時間を1時間、顎骨削合の手術時間を40分程度、術後3日間モニタリングする。また、体動計を用いて術後の活動状態の記録も検討する予定である。また、記録した睡眠データの定性的および定量的解析を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍による大阪府の非常事態宣言により、大学で実験不可能な期間が生じたり、歯学研究科建物の移転調整が生じ、予定通りの実験が遂行不可能であったため次年度使用額が生じた。また、初年度に行った実験では動物種や麻酔時間の影響もあり、全身状態が安定しないこともあったため、動物種の変更や全身麻酔時間の調整を施行した。以上の対応にて、当初計画したプロトコールで、睡眠覚醒状態を記録することが可能となった。このことにより、初年度実施不可能であった分も含め、次年度では全身麻酔手術の施行、データを解析、睡眠覚醒状態の変化、脳波活動の等の評価を行っていく予定である。
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