研究実績の概要 |
睡眠時ブラキシズム(SB)は睡眠中の非機能的な顎運動であり,顎口腔系の諸器官に様々な悪影響を及ぼし,歯科領域における患者QOLの低下を招く原因であるが, 詳細な発症機序は未だ明らかではない. 過去にセロトニン2A受容体遺伝子(HTR2A)の一塩基多型がSBの発症リスクに関与することが報告されており, セロトニン2A受容体の機能変化がSBの発生機序に関与すると示唆されているが, これらの標的は脳内に存在することから, 直接的な検証は困難とされてきた. 本研究では, 先行研究にて樹立されたSB特異的iPS細胞と, HTR2A陽性ニューロンのモニタリングシステムを応用し, 標的ニューロンに特異的な異常パラメーターを遺伝子発現解析・カルシウムイメージングによって検出し, SB発症機序の解明を目指す. まず我々は, iPS細胞(コントロール株)由来のニューロンに対し, HTR2A特異的なレポーターレンチウイルスを適用し, RNA-seq解析を実施した. 本研究のターゲットであるHTR2A陽性ニューロンは全細胞中の約24%であり, これらはグルタミン酸作動性, GABA作動性, コリン作動性ニューロンであることが明らかとなった. さらに,これらのニューロンの電気生理学的特性を調査するため,ホールセルパッチクランプ法を用いて,受動的膜特性と能動的膜特性を記録し,SBとコントロール間で比較検討を行なった.受動的膜特性の各パラメーターに有意な差は認めなかったが,受動的膜特性の一部パラメーターに有意差が認められた.リスクアレルを有するiPS細胞(SB株)由来のニューロンは,コントロール株由来のものに比較し,AP frequencyの有意な増加,AP half durationの有意な減少が認められ,興奮性が増していると示唆された.
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