研究課題/領域番号 |
20K23107
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
大森 江 岡山大学, 大学病院, 医員 (30884879)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2024-03-31
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キーワード | 睡眠時ブラキシズム / 機械学習 / 生体情報識別 |
研究実績の概要 |
筋電計による睡眠時ブラキシズム(SB)評価では,SB以外の筋活動もSBとして誤認される可能性があり,新たな識別手法の確立が望まれる。そこで機械学習の応用によりSB/非SB時の筋電図の識別が可能か検討した。対象は,当科の教職員のうち本研究の同意が文書で得られた健常者12名とした(男性/女性:10/2名,平均年齢35.3±8.4歳)。これら被検者に,シールドルームにて仰臥位にてSB様運動(噛み締め)時,非SB運動(嚥下,掻痒,頭部・体幹部の体動)および歯の接触を伴わない噛み締め(bracing)を行わせた。その際の咬筋部,顎下部,オトガイ部,輪状軟骨部の筋電図をPolysomnography(PSG-1100,日本光電)を用いてカットオフ周波数10Hz,サンプリング周波数1,000Hzにて1名の検者が収集した。機械学習によるSB評価は,両側咬筋筋電図,両側舌骨下筋群,オトガイ筋,右側舌骨上筋群および皮膚伝達音を対象に評価した.特徴量は,各種生体情報の波形をフレーム長100ms,フレームシフト50msとしてメル周波数ケプストラム係数(MFCC)を算出した.このMFCCに対して,1名の特徴量について他の11名の被検者の特徴量を教師データとした機械学習にてSB様運動,非SB運動およびbracingの検出に関する感度,特異度を算出した。その際,単一の生体情報を対象としたシングルストリームHMMと複数の特徴量を同時に扱うマルチストリームHMMの2種類の解析手法を適用し,これら解析手法の差異についても検討を行った。 対象被験者12名のSB様運動の検出の感度/特異度を検討したところ,咬筋筋電図を用いた場合の識別精度が最も高く,感度/特異度:81.4±14.4/94.7±3.2であった。また,マルチストリームHMMを用いることで,精度はさらに上昇した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,健常者の睡眠時筋電図をもとに,単一生体情報から評価しようとするシングルストリームHMMによる解析に加え,複数の生体情報から得られる特徴量を同時に解析するマルチストリームHMMによる解析精度の向上を検討した。その結果,特徴量を複数用いることで,精度の向上につながることが確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
今後はこれまでの検討結果をもとに,被験者の自宅にて実際の睡眠時の筋電図測定を行い,その筋電図波形の識別が可能か検討を行う。すなわち,本研究の趣旨に自主的に同意した健常 者の自宅にて睡眠中の筋電図測定を行う。電極の貼付位置は,両側咬筋,両側舌骨下筋群,オトガイ筋,舌骨上筋群とし,右側下顎角部には皮膚伝達音センサーを貼付し,睡眠中の筋電図測定と同時に音 声動画を記録する。各種筋電図ならびに皮膚伝達音は睡眠ポリグラフ装置(PSG-1100,日本光電)にてそれぞれカットオフ周波数10 Hz, 500Hz,サンプリング周波数1,000Hz,16kHzにて収集する。咬筋筋電波形のSBイベント抽出は,ソフトウェアを用いて振幅が最大噛みしめ時の10%以上,持続時間0.25秒以上の波形(burst)を自動抽出した後,抽出されたburstのイベントを,2名の検者が独立して音声動画データよりSB運動(グラインディング,クレンチング)と非SB運動(掻痒,体動,嚥下,発語,いびき)に分類する。その後,2名の評価結果を統合することで臨床評価結果とする。機械学習によるSB評価は,両側咬筋筋電図,両側舌骨下筋群,オトガイ筋,右側舌骨上筋群および皮膚伝達音から各burst時の各種筋電図情報の波形をフレーム長100ms,フレームシフト50msとしてメル周波数ケプストラム係数(MFCC)を算出する。このMFCCに対して,単独の生体情報を対象としたシングルストリームHMMと複数の特徴量を同時に解析するマルチストリームHMMにより,各burstをSB/非SBに識別する。その後,各種生体情報から機械学習によって識別した各burstのSB/非SBの結果について,感度,特異度,陽性適中率,陰性適中率を算出し,検出能を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究遂行上, 次年度,実際の睡眠時データを対象として,今年度検討した筋電図の識別手法が臨床応用可能か,またその識別精度がどの程度なのかについて検証していく予定であるため、必要な費用に充当する。
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