研究実績の概要 |
本年度は,機械学習による筋電図の識別手法を臨床研究へ応用するための基礎的検討を引き続いて行った。すなわち,各種の口腔機能を行った際の筋電図データを識別する手法を,これまでの単一の生体情報による解析方法に加え,複数の生体情報を同時解析する解析モデルを取り入れることにより,より妥当性の高い解析モデルを検討するとともに,最適な生体情報についての解明も行った。 2023年度の研究結果を基に,機械学習による識別能について再度評価を行った。その結果,単一の生体情報を解析対象とするシングルストリームモデルでは,咬筋EMGの識別精度が最も高い調和平均値を示した(SB様運動(噛み締め)時:0.77 ± 0.08, 0.77 ± 0.13,非SB運動:0.91 ± 0.04, 0.87 ± 0.05)。一方,舌骨上筋のEMGが歯の接触を伴わない噛み締め(bracing)の検出に最も高い感度,特異度,陽性/陰性適中率を示したが,その調和平均値は0.35 ± 0.23であった。この歯の接触を伴わない噛み締め(bracing)の検出における,特異度,陰性的中率は,7つの生体情報でいずれも0.8以上であった。 複数の生体情報を同時に解析する手法であるマルチストリームモデルでは,シングルストリームモデルよりもさらに高い精度が示された。特に,両側咬筋,両側舌骨上筋,皮膚伝達音をコンビネーションさせたモデルにおいては,SB様運動(噛み締め)ならびに非SB運動の検出において最も高い感度,特異度,陽性/陰性的中率を示した(調和平均値:0.83 ± 0.09(SB様運動(噛み締め)),0.94 ± 0.03(非SB運動)。このモデルは,歯の接触を伴わない噛み締め(bracing)の検出において感度以外では最も高い精度を示したが,その調和平均値は,0.5以下であった。
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