研究課題/領域番号 |
20K23108
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
納所 秋二 岡山大学, 大学病院, 医員 (40884797)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | rhBMP-2含有人工骨膜 / 歯科用メンブレン |
研究実績の概要 |
我々はインプラント周囲炎および難治性の骨折における新たな治療法の開発を目的にE-rhBMP-2含有人工骨膜(歯科用メンブレン)の開発を進め,PLGAメンブレンの有用性を報告してきた.しかし,歯槽堤増大術などの処置を行う際,メンブレン内部にのみ骨形成を誘導することが理想的な顎堤形態の再現のためには望ましいが,PLGAメンブレンを用いた場合,メンブレンの両側に骨形成が誘導される.そのため,片側性に骨形成を誘導することが可能な材料を使う方がより臨床に適しているのではないかと考え,新たな歯科材料を用いたE-rhBMP-2含有人工骨膜の開発を進めることとした. 具体的には,8~12週齢の雌の野生型マウス(C57BL/6J)の背部皮下にrhBMP-2を含浸させたPLGAと材質の異なる歯科用メンブレンを移植したのち,4週間後に組織を回収してmicro-CT解析および組織切片のH-E染色による組織学的評価を行った.同メンブレンは7.5cm×12.5cmのサイズで使用し, E-rhBMP-2をメンブレンに浸透させた.なお,浸透させたままの状態で移植する群と,浸透後に凍結乾燥処理して移植する群を設定した.対照群には蒸留水をメンブレンに浸透させたものを用いた. その結果,E-rhBMP-2を浸透させた歯科用メンブレンを移植した群においては凍結乾燥処理の有無に関わらず,マウスの背部皮下においてE-rhBMP-2によりメンブレンの片側性に異所性骨の形成を認めた.この結果から,新生骨の形成される部位の制御が可能となるこの歯科用メンブレンの有用性が示されたと考えられる. また,インプラント周囲炎モデルの作製に先立ち,雌のビーグル犬の下顎小臼歯の抜歯処置を施行し,2ヶ月の治癒を待って小臼歯部へインプラント体を埋入した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始当初は,マウスの背部皮下ではなく頭蓋骨部にrhBMP-2含有歯科用メンブレンを移植していた.しかし,頭蓋骨の形態とメンブレンの物性が原因となり創部の裂開が相次いだためBMP-2の骨形成能が確認できない状況であった.そのため,メンブレン移植部位をマウスの背部皮下に変更してメンブレンに浸漬させたE-rhBMP-2の異所性骨の形成能を評価することでこの問題を解決した.
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今後の研究の推進方策 |
イヌの下顎小臼歯部の抜歯後,治癒骨へインプラント体を埋入し現在はオステオインテグレーションの獲得のため8週間の待機期間中である.今後はインプラント体の近遠心へ1壁性の骨欠損を作製して欠損部への感染を惹起しインプラント周囲炎モデルの作製を行い,同部へのrhBMP-2含有歯科用メンブレンとβ-TCPの適用による再生骨量を解析する予定である.また,同時にウサギを用いた難治性骨欠損モデルの作製も進行させる予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスの影響もあり,当初の計画よりは実験の進行が遅延したこと,消耗品等のが安価に購入できたことから、わずかではあるが次年度使用額が生じた。当該予算については次年度に必要な物品購入等に充当する予定である。
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