研究実績の概要 |
申請者らのグループは,インプラント治療への適応を念頭におき,骨髄内という特殊な環境下におけるBMP-2の効果が,むしろ骨髄細胞の増殖に伴う骨形成の抑制という従来の知見とは相反するものであることを突き止めた.その事実に着想を得て,BMP-2背部皮下移植により形成された異所性骨の解析を行った結果,骨髄間葉系幹細胞 (BM-MSC)が存在することを発見し,BMP-2が骨髄形成能をもつ可能性を見出した.しかし,BMP-2によって異所性に誘導された骨髄様組織が正常な骨髄と同様に造血機能を有しているか,BMP-2によりどのようにしてBM-MSCが動員・誘導されるのかは未だ不明である.そこで本研究では,マウス遺伝子工学技術を応用することで,BMP-2の骨髄形成メカニズムを生物学的に解明する.本研究は,現在,受動的損傷治癒に依存するインプラントの骨結合を,骨髄生物学的な側面から加強することに繋がる. 8週齢C57BL6J雌マウスの背部皮下にrhBMP-2とb-TCPの複合体を移植し,移植後3,5,7,14,28日目にサンプルを回収しフローサイトメトリー解析を行ったところ,移植後28日目の時点でLin-Sca1+cKit+CD48-CD150+の造血幹細胞が存在することが明らかとなった.そこで,移植後28日目のBMP-2誘導骨を用いて解析を行うこととした. 8週齢C57BL6J雌マウスの背部皮下にrhBMP-2とb-TCPの複合体を移植し,移植後28日目にBMP-2誘導骨を回収し,免疫組織学的解析にて,血管,神経,骨膜が存在することを確認した.さらに,目的の細胞が蛍光標識された各種レポーターマウスを用いて,BMP-2誘導骨に間葉系幹細胞,骨芽細胞,破骨細胞が存在することを確認した.
|