研究実績の概要 |
本研究は、生体吸収性および骨置換性を有する多孔質炭酸アパタイトと骨髄幹細胞を複合化することにより、新規の骨再生医療用スキャフォールドの開発を目的とする。 前年度までの研究で、多孔質炭酸アパタイト顆粒の作製条件を変えることで、炭酸含有量の制御に成功した。さらに多孔質炭酸アパタイト顆粒上で骨髄幹細胞を培養し、緻密体と比べて有意な細胞増殖を認め、新たな骨再生医療用材料としての可能性を見出した。 本年度は前年度に作製した異なる炭酸含有量を有する多孔質炭酸アパタイト顆粒を用いて動物実験を行い、生体内での骨形成能や吸収性を評価した。炭酸アパタイトは硫酸カルシウムを炭酸溶液に浸漬し炭酸カルシウムに、炭酸カルシウムをリン酸溶液に浸漬し、炭酸アパタイトに組成変換する。リン酸化の温度を100、120、140と変えることで、炭酸含有量がそれぞれ8.5、3.6、2.2%の多孔質炭酸アパタイト顆粒を作製した。ウサギ大腿骨に直径7 mm、高さ7 mmの骨欠損を作製し、異なる炭酸含有量を有する多孔質炭酸アパタイト顆粒を埋入した。埋入後1、3か月後に摘出し、研磨切片を作製し、組織学的に評価した。埋入後1、3か月後において炭酸含有量が多いほど、骨形成量、顆粒の吸収量は大きくなる傾向があった。 また多孔質炭酸アパタイト顆粒上にFischer344系ラット大腿骨から採取・培養した骨髄幹細胞播種し複合体を作製した。この複合体を骨形成培地で培養した後に、同系ラット背部皮下に移植した。移植後4,8週後に周囲組織を含めて摘出、組織標本を作製し観察を行ったところ、複合体周囲には炎症性細胞は認めず、複合体の良好な生体親和性と安全性を確認した。さらに、気孔内部には血管の侵入と異所性に骨様硬組織の形成を認めた。
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