研究課題
近年、生活習慣病胎児期起源説(DOHaD: Developmental Origins of Health and Disease)という概念が注目され、妊娠母体の栄養状態が、児の将来の生活習 慣病発症リスクを規定していることが様々な疫学調査によって実証されつつある。 そこで本研究では、妊娠母体が摂取する(遺伝子のメチル化に必須の栄養素である)One carbon metabolism 関連栄養素の摂取量に着目した動物実験を行うこ とで、成熟後の肥満および骨粗鬆症の発症素因が胎内で規定されている可能性をエピジェネティックな観点から新規に提示し、生活習慣病の先制医療の分子基盤 を提供すること目的として遂行している。前年度までに、One carbon metabolism 関連栄養素のうち、葉酸に着目した解析を行った。妊娠母体の食餌由来葉酸を欠乏させることで、その産仔の体重お よび血糖、血清脂質などの血清生化学的解析を行い、離乳後の産仔に普通食を負荷した際は、全ての項目について有意な差は得られなかったが、高脂肪食を負荷した場合には、葉酸欠乏妊娠母の産仔に肥満傾向や糖脂質代謝異常が生じていることが示唆された。そこで、最終年度の今年度は、引き続き、DOHaD の概念の下で、栄養素を摂取した個体のみならず、その仔を用いた解析実験を行い、妊娠母体の栄養状態が制御する遺伝子のエピゲノム制御を介した仔の生涯の、特に、肥満回避機構を追究し、妊娠期におけるOne carbon metabolism 関連栄養素の適正摂取の意義を新しい側面から提示した。
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