高齢化に伴う我が国の課題は「医療費削減」と「健康寿命の延伸」である。これらの解決策を追究すべく、鹿児島大学では多職種によるコホート研究を開始した。本研究では、近年歯科分野が着目している口腔機能低下症に焦点をあて、これらの改善が全身機能低下の改善をもたらすことが可能であるか統計学的に検討することを目的としている。鹿児島県垂水市の65歳以上の高齢者832人を対象とし、口腔機能低下症とフレイル、サルコペニアおよび軽度認知障害との関係性について検討した。口腔機能低下症は対象者の半数程度が該当しており、フレイル、サルコペニアおよび軽度認知障害の該当者が多い傾向を示した。つぎに、口腔機能低下症の診断7項目(口腔不潔・口腔乾燥・咬合力低下・舌口唇運動機能低下・低舌圧・咀嚼機能低下・嚥下機能低下)に注目し、どの項目が全身状態と強く関連するか多変量解析により検討したところ、フレイルは嚥下機能低下と独立した関係があり、軽度認知障害は咬合力低下と低舌圧に独立した関係があることがわかった。 2020年度は新型コロナウイルス拡大を危惧し、コホートが中止となったが、2021年度は感染対策に十分留意し、これまでと同様の健診項目で再開することができた。健診後3、4ヶ月を目安に結果に基づいた報告会を行なっているが、報告会での口腔機能低下症予防に対する指導も行い、参加者の健康への意識づくりに寄与することもできたと考える。
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