本研究は農薬として使用されるネオニコチノイドによるヒト中枢神経系・分化発達への影響を解析する。これまで実験動物を用いた研究から、周産期のネオニコチノイド曝露が中枢神経系の発育・発達を阻害する可能性が報告されているが、ヒトへの影響は明らかではない。また、中枢神経系分化・発達と同時期に構築され始める血液脳関門(BBB)への影響を検討した報告は少なく明らかではない。以上から、ネオニコチノイド曝露による胎児脳神経系の発達、発育への影響とその機序の解明を目指す。 本年度においては神経前駆細胞株へのネオニコチノイド曝露影響及び、血液脳関門in vitro 再構成キットを用いてBBBへのネオニコチノイドへの影響を行った。神経前駆細胞株がニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイトに分化するうえで重要な期間である3日目に注目して研究を行うため分化開始から3日目及び7日目までネオニコチノイドを曝露した後にサンプリングを行い解析を行い曝露群と非曝露群に差を認めるのか検討を行った。その結果、培養3日目、7日目細胞毒性試験によってネオニコチノイドのよる細胞死は誘導されない。また、各種神経系分化マーカーの有意な変化が得られないことがリアルタイムPCR法により考えられた。また、細胞の形態についても免疫染色を行い検討を行ったが、リアルタイムPCR法の結果と同様に各種神経系分化マーカーに有意な差は認めなかった。しかし、7日目において有意差はなかったがコントロール群と比較してネオニコチノイド曝露群のニューロンの伸長傾向を認めたため、さらに長期間の曝露期間を設定し、検討を行う必要性が考えられた。
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